アフガンの治安低下が最悪に

2010.7.13
追加 2010.7.14 14:00



 military.comによれば、アフガニスタンの独立系人権監視団体が、同国のテロは最悪になり、今月は現在までに民間人1,074人が殺されたと報告しました。一方で、国際部隊に殺された人は減り、交戦規定の制約のおかげで、NATO軍の空爆による死者は半減しました。また、ペトラエス大将が交戦規定を変えるという推測が提示されてきましたが、NATO軍の広報官は週末にこれを否定しました。

 「the Afghanistan Rights Monitor」によれば、ここ数ヶ月で増援部隊の30,000人が到着し、テロは増加しました。タリバンは待ち伏せ、自爆攻撃、IED、暗殺で応酬しています。人権監視団体によると、先月だけで民間人212人が殺されました。この統計は目撃者、被害者の家族、地元当局、報道から収集されました。6月には1,200件のテロ事件があり、これは2002年以来、単月では最大です。「治安の乱れでは、2010年はタリバン政権の崩壊以降、最悪の年になりました」と報告書は書いています。先月は国際部隊の死者も最大で、米兵60人を含む、103人が死にました。今年現時点で、民間人の死者、61%は武装勢力の攻撃、特に道路脇に仕掛けられた爆弾で死んでいます。連合国とアフガン政府による偶発的な死は下落しました。国際部隊が原因で、今年1月1日から6月30日までに、民間人210人が死亡しました。総計の約20%は昨年同時期の26%よりも下落しました。民間人の死者1,076人は昨年の同じ6ヶ月よりも僅かに増加しましたが、2007年の同時期の684人という国連報告から急増しました。アフガン軍と警察は108人、約10%を、武装勢力は661人、61%を殺しました。残る9%は、民間軍事会社、犯罪者、不明が原因です。NATOの空幕による偶発的な死は94へと半減しました。

 民間人の死者数に関しては、団体により、様々な数字があります。人権監視団体の数字は、NATO軍の今年半年で死亡した非戦闘員は総計592人で、その82%が武装勢力の攻撃で、残りが国際部隊による偶発的な死とする数字よりも上です。国連の数字もNATO軍の数字よりも高い傾向があります。


 時間がないので簡単に書きます。明日、もう少し追加しようと思います。

 ペトラエス大将が現地に着任する前に、米議会で盛んにアフガンの治安は向上していると説明しましたが、議員たちは懐疑的でした。今回の調査結果は、それを裏づけるものです。もはや、誰もアフガンの治安がよくなっているとは思いません。NATO軍が民間人の安全に注意を払うようになったことは向上ですが、戦争全体では進展はみられません。


 以下に、コメントを追加します。

 数字から推測すると、増援部隊の到着で、タリバンが攻撃を激化、それに巻き添えで死亡する民間人が増えているのです。これでアフガン人を守っていると宣言するのは無理があります。

 過去に似たことがありました。太平洋戦争に中国戦線に赴いた米陸軍のアルバート・ウェデマイヤー将軍は、中国人は日本軍からだけでなく、中国共産党軍からも被害を受けていた、と言いました。「第二次大戦に勝者なし ウェデマイヤー回想録」(講談社)には、中共軍は自分たちにくみしない中国人を「日本軍の協力者」として殺し、中国人を日本軍の攻撃から守ろうとせず、結果として「中国の一般大衆の大多数の者は、両軍の銃火の前に身をさらすほかに方法がなかった」(文庫版 下巻 p121)と書かれています。アフガンも似たような状況にあります。

 アフガン戦は、イラク戦の延長として行われました。同時多発テロ直後に行われた攻撃と、イラク侵攻後に増強されたアフガン戦は別物として考える必要があります。戦略なきイラク戦の延長となった結果、アフガン戦の戦略はあってないようなものでした。

 こんな曖昧な考えの下で、他国に侵攻し、住民を巻き込んだ戦争を展開すればどうなるか。その答えはすでに太平洋戦争で出ているわけです。戦争の結果を考える一つの方法は、過去の類似する戦いと比較してみることです。湾岸戦争の場合、民間人と軍隊をかなり明確に分離できたのに比べて、イラク戦、アフガン戦共に、住民がいる場所での戦闘を余儀なくされています。アメリカ社会(日本社会もですが)は、湾岸戦争と同じイラクでの戦いだし、最高指揮官は湾岸戦争時の大統領の息子でもあるという理由で、イラク戦もうまく行くと考えました。しかし、真相は違いました。この希望的観測は戦史を尊重していなかったからです。


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