PTSDの新基準は帰還兵を救う

2010.7.13


 先日、オバマ大統領が表明したPTSDの申告基準緩和について、military.comが新基準の詳細を報じました。

 新基準では、帰還兵は戦争で精神的な傷を負うのに、実際に戦闘を行う必要はありません。死や負傷の恐怖と共に暮らすことは兵士が精神衛生上の問題を起こすのに十分と認められます。帰還兵は、銃撃戦やロケット弾の攻撃など、ストレスの原因となる特定の事件をあげて、書面にする必要はありません。そのかわりに、帰還兵は戦闘地域で従軍し、PTSDの症状の関連する状態と一致する仕事をあげるだけです。これによって、兵士は直接的と交戦しなくてもPTSDを申請することができます。女性兵士はこの新基準の主要な受益者です。医師、看護士、その他の医療部門の兵士はしばしば彼女たちが戦闘を経験することなくトラウマを持ちます。道路脇に爆弾が設置された道路を定期的に走る輸送隊のドライバーなど、他の支援部隊の兵士もストレスの多い役割にいます。新規則は過去に遡って適用され、過去の戦争の帰還兵も申請を起こせます。帰還兵の支援団体「the Veterans of Foreign Wars」のジョー・デイビスは、不正行為をしようとする人は常にいますが、新しい規則が多くの人々を助けるという事実を曖昧にしてはならない、と言いました。


 やっと妥当な基準ができたという印象です。かつては、PTSDの原因となる出来事を2つあげられないと、精神的な傷とは認めてもらえませんでした。現実には、1度の経験でもPTSDは起こります。私が読んだ事例では、従軍牧師が喉を負傷した兵士に人工呼吸を試みたところ、喉の傷から自分が吹き込んだ空気が漏れるのを目撃したというのがありました。こうした生々しい体験でなくても、輸送部隊のドライバーだった女性兵士がPTSDになった事例もあります。女性兵士が自殺したり、除隊後にホームレスになる確率は男性兵士よりも高いという報告もあります。同じような体験をしながらも、PTSDにならない兵士もいます。このため、PTSDになる兵士は、やる気がないとか、精神が弱いという批判を浴びせられがちでした。これで、ようやく正当な主張が通るようになったわけです。

 対テロ戦争以降、PTSDとゲイ差別撤廃は、米軍内で起こりつつある変化の代表といえます。軍隊に関連する文化に大きな変化が起こっていることを実感させられます。


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