アフガン軍の実力評価に問題あり

2010.6.30

 military.comによれば、アメリカは、アフガニスタン軍と警察の部隊が自力で戦う能力を過大評価し、戦いに勝つための戦略と兵士の帰還を危険にさらして来たと、独立した調査が明らかにしました。

 この調査は、アフガン軍の有効性を判断するために、軍が過去5年に使ってきた評価システムを考察するのが第一の目標でした。その結論は、スタンリー・マクリスタル大将(Gen. Stanley McChrystal)が提供した上向きの評価と矛盾します。アフガン軍の能力は、戦争が好転しているかを量る唯一最大の指標で、8年以上前に戦争が始まってから、米戦略の基軸とされてきました。

 政治家は、この最新の発見を、オバマ大統領の戦争への対処をただすために使うとみられています。民主党には、オバマ大統領がアフガン軍がすく後ろに来ていることを保証せずに増派したことに不満があります。軍事委員長のカール・レビン上院議員(Sen. Carl Levin)は「タリバンにとっての悪夢は、アフガン軍が変わることだ」と述べました。アメリカは270億ドルを活動に費やし、その半分の金はアフガン再建に注ぎ込まれてきました。しかし、計画は教官と活用できるアフガン人の不足、暴力の急増に妨げられました。

 研究を主導したアーノルド・フィールド(Arnold Fields)は「問題はシステムに欠陥があり、信頼性がなく、一貫性がないことです」と言います。マクリスタル大将は記者に「成長は予定通りです」「我々は計画より先んじています」と言いました。しかし、報告書は成功を判定するために使われたシステムに大きな欠陥があることを見出しました。ある例では、同じに評価された部隊が異なる能力を持っていました。あるいは、高く評価された部隊は米軍が撤退すると知ると進歩が逆戻りしました。たとえば、北部にあるバグラン州の警察は、2008年8月にNATO当局から最高レートを与えていました。「CM1」は警察が独立して作戦を行う能力を持っていることを意味します。2月に調査官が訪問しようとすると、彼らは地区は治安が悪く、武装勢力に制圧されていると言いました。ある警官は調査官に、警察部隊はかろうじて機能するところまで衰えたと言いました。

 レビン上院議員は、アメリカはアフガン軍がもっと多くのアフガン兵を戦闘に配置できるようになるまで、カンダハル攻勢を延期すべきたと言いました。彼は、カンダハルにアフガン軍が5,300人しかおらず、アメリカが率いる連合軍が6,900人であることを「まったく受け入れ難い」と言いました。計画は、2011年10月までに、アフガン軍に71,600人、同警察に134,000人を養成するとしています。

 フィールド氏は、駐アフガンNATO司令部が3月に彼の研究結果の説明を受けたと言いました。当局は4月に評価システムを変更することを認めました。アフガンの訓練任務を率いるビル・コールドウェル中将(Lt. Gen. Bill Caldwell)は、NATO軍は閉鎖寸前のいくつかの施設で教官が大幅に不足をみてきたと言いました。調査官への書簡の中でコールドウェル中将は「永続する自立した戦力を構築することは、否定のしようもなく課題のままで、将来有望な目標の達成は保証されていません」と述べました。


 イラク侵攻以降、米軍関連の情報を調査してきた人なら、この記事に驚かないでしょう。これは、イラクでもすでに起きていることだからです。イラク軍も高く評価された部隊が、数ヶ月後にはレベルが落ちることがありました。

 これは、NATO軍があまり真面目に評価をやっておらず、文化の違いによる評価違いなど、細かいことに目配りをしていないことに原因があると想像します。兵士の訓練度は誤魔化しやすいものでもあります。早くアフガン軍を独り立ちさせなければならないというプレッシャーも、訓練度を高く評価させる要因となります。

 私にとっては、想像していたとおりの実態が明らかになったというところです。以前から、このサイトではアフガン戦に否定的な見解を続けてきましたが、その一端が立証されたわけです。イラクで起きたことはアフガンでも起こり得ます。

 レビン上院議員の懸念は当然ですが、私は元々、アメリカはうまく行かないことをやっているのであり、この程度の成果で当然だと考えています。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.