カンダハル攻勢の近況

2010.6.26
追加 同日 19:15

 military.comが、カンダハルの戦いの近況を報じました。アフガン軍と連合軍は、空爆でIED工場を破壊した後にカンダハル州の重要な地区でタリバンの最高指揮官を殺害しました。

 水曜日、連合軍がパンジャワイ(Panjwai)にあるタリバンのIED工場を空爆した後で武力衝突が起こり、連合軍とアフガン軍が空襲した場所を急襲し、タリバン軍と戦いました。合同部隊は素早く破壊されたIED工場の周辺を守る武装勢力を圧倒しました。パンジャワイのタリバン指揮官、イザトゥーラ(Izzatullah)が死亡しました。タリバンの犠牲者は15人でした。イザトゥーラは、連合軍への攻撃を計画・実行し、2008年にカンダハル市郊外のサルポザ刑務所(Sarpoza prison)への攻撃に関与したとされます。Sarpoza prisonはカンダハルにおけるタリバンの主要な拠点に数えられ、他にこうした地区は、アルガンダブ(Arghandab)、ザーリ(Zhari)、メイワンド(Maywand,)、ゴルラック(Ghorak)、カーカレズ(Khakrez)、シャー・ワリ・コット(Shah Wali Kot.)があります。先週、連合軍とアフガン軍は、激戦を含んだ5日間の北部地区での軍事活動の間にタリバンをシャー・ワリ・コットから押し出しました。「この軍事活動を通じ、合同部隊は100人以上の武装勢力と指揮官に大きな一撃を与えた」たとISAFは発表しています。過去4ヶ月間で、70人以上の中堅クラスのタリバン指揮官がカンダハル市の内外における一連の特殊作戦による急襲で死亡しました。イザトゥーラは5月以来、カンダハルで殺害される3番目の指揮官です。5月30日、アフガンと連合軍の特殊作戦部隊は、カンダハル市、ザーリ地区、アルガンダブ地区を指揮するムーラー・ゼルゲイ(Mullah Zergay)を殺害しました。5月29日、アフガン軍と連合軍は、カンダハル州の2人の最高指揮官の1人、ハジ・アミル(Haji Amir)を殺害しました。タリバンはカンダハル州で自身の攻勢を行いました。タリバンは部族長、政治家、その他のエリートを暗殺の対象として、狙ってきました。アルガンダブ地区長、カンダハル市の副市長を含む20人以上が過去数ヶ月間に殺害されました。

 今年初期にアフガンの主要地区で行われた国防総省の状況調査は、アフガン国民がアフガン政府を支持することは極めて難しいことを描写します。カンダハル州とヘルマンド州は、大部分の人たちがアフガン政府と連合国に対して敵意を持ち、タリバンに同調するか、支援をしていると考えられます。カンダハル州の13地区中、11地区において、1地区(カンダハル市)は政府を支持しました。3地区は中立。6地区はタリバンに同調。1地区はタリバンを支援していました。ヘルマンド州の13地区中、11地区において、8地区は中立。1地区はタリバンに同調。2地区はタリバンを支持しています。


 この記事が言う「アフガン政府を支持する地区」は、地区の武装勢力がタリバンと戦っても構わないと考えるほどの地域であり、「中立」「同調」「支持」は程度の差こそあれ、タリバンの味方と考えるべきです。つまり、カンダハル州とヘルマンド州にはアフガン政府を支持するのは1地区しかないわけです。これは厳しいです。いくらNATO軍が民間人の死傷者を減らしても、タリバンの支持者は減りません。おまけに、この努力を率いてきたマクリスタル大将が、日頃、悪態をつきながら勤務していることを、自ら雑誌記事で暴露してしまったので、アルカイダやタリバンは、これを「敵の指揮官は二枚舌」という宣伝材料として活用することができます。マクリスタル大将がカルザイ大統領を信頼できないと見ていることは、特においしい好材料です。現地指揮官が敵に格好の攻撃材料を与えたわけです。これで目的を達成できたら、それこそ奇跡です。

 NATO軍とアフガン軍が敵に与えた打撃が、こういう不利な材料を上回るかが問題ですが、その評価は流動的です。かつて、タリバンはカブールから追い出されましたが、後に復活しました。パキスタンという隠れ家があったからです。現在も、この隠れ家はタリバンが利用可能で、パキスタン政府による対タリバン活動は極めて疑わしいものです。もし、パキスタン国内の隠れ家が使えない状態でカンダハル攻勢をやるのなら、それは効果が期待できます。しかし残念ながら、隠れ家は健在です。このため、カンダハル州からタリバンを追い出しても、それは最終的な勝利とは言えないでしょう。

 そう考えると、タリバン戦士や指揮官を100人以上殺害したところで、それはそれほど進展があったとは言えないと判断できます。この程度ならすぐに補充され、戦力は元に戻ります。戦いは、敵を殲滅する現実的で具体的な方法を見出した方が勝ちます。国際社会はそれをまだ見つけていません。一方、アルカイダとタリバンには、現在の活動を続けてさえいれば、いつかは自分たちの主張が通るという確信があります。彼らの方が安心して、戦いを続けていけるわけです。



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