南北国境でキセノン増加の謎

2010.6.22

 military.comによれば、北朝鮮が水素爆弾を製造する複雑な技術をマスターしたと主張した後で、南北朝鮮の境界線の近くで高い放射線レベルが観測されました。

 韓国の科学省は、調査が北朝鮮が核実験を行ったことを除外したと主張しましたが、放射線の源を特定できませんでした。核爆発の後に続く強い地震は証拠がなかったと言いました。5月12日に北朝鮮は、科学者が水素爆弾を作るのに必要な技術を完成したと主張しましたが、技術の用途は言及せず、単に「新しいエネルギーの開発へ向けた進展」と言いました。韓国の専門家は北朝鮮が実際にそのような進展を見たことを疑問視しています。世界中の科学者は何十年間も核融合を実験してきましたが、未だに実現可能な代替エネルギーは開発していません。

 しかし、5月15日、核爆発のあとや、原子力発電所からの放射線漏れで放出される不活性ガス・キセノンの大気濃度が、南北境界線の韓国側で通常の8倍になりました。その、韓国は強力な人工地震の兆候を探しましたが、北朝鮮国内でそうした地震の兆候はありませんでした。科学省は地下核実験の可能性はないと結論し、ガスは有害ではないと言いました。韓国のキョンヒ大学の専門家ワン・ジョンホ氏によれば、どんな核実験も地震活動が記録されますが、キセノンの存在は放射線漏れからも起こると言いました。キセノンが見つかったとき、風が北から南へ吹いていたので、科学省当局者はガスが韓国の原子力発電所から来たのではないと言いました。匿名を希望した当局者は、キセノンがロシアや中国から来たかも知れないと言いました。ワン氏はキセノンの大気濃度を説明できるのは、核実験と放射線漏れだけだと言いました。ウィーンの国連当局者は先月、放射能の増加は見つけられなかったと言いました。この調査結果は予備的で、当局者は匿名を条件に語りました。


 朝鮮日報は核実験の可能性があると報じ、産経新聞もこれに同調しました。しかし、毎日新聞や時事通信は否定的な記事を掲載しました。産経新聞は好戦的な主張を好みますが、しばしば軍事報道に関しては不正確です。間違った情報に基づいて軍事的な判断をくだすことが危険なのは、言うまでもありません。しかし、産経新聞はこういう間違いを繰り返しています。

 2006年、2009年に北朝鮮が核実験を行ったときも、地震波が観測されました。核実験の際には、まず地震波が観測されるものです。2006年の実験では放射線の増加が観測されましたが、2009年には観測されませんでした。今回は放射線だけで、地震波はなしです。どう判断すべきかは議論を待ちません。

 北朝鮮は国民の忠誠心を高めるために、国民に存在しない技術を開発したと知らせることがあります。北朝鮮から亡命した人たちの中には、北朝鮮が核兵器を持っていると証言した人たちがいます。彼らの情報によると、北朝鮮はかなり前から核兵器を保有しています。しかし、この情報は北朝鮮政府がばらまいた偽情報かも知れません。こうした嘘を見破るには、事前に知っておくべき情報を頭に入れておき、手に入れた情報と照らし合わせて判断するしかないのです。

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