軍人病院で麻薬過剰投与疑惑が浮上

2010.6.14

 また、退役軍人と麻薬の問題に注目させる事件が起きています。military.comによれば、ハンプトン軍人医療センター(Hampton VA Medical Center)で働いた医師2人が、ここで強力な麻薬が退役軍人に処方され、彼らの根本的な医学的状態が未処置の間、麻薬中毒のままにしていると言います。

 医師たちは、大量の麻薬が危険な薬物のパイプラインを供給しているかも知れないと警告しています。連邦当局は申し立てを調査中です。医師の内1人は、彼女の懸念を公表した後で解雇されました。パメラ・グレイ医師(Dr. Pamela Gray)は、23年間開業医を経た後で2008年にハンプトン医療センターにスタッフとして加わりました。退役軍人は依存症になる危険が高いモルヒネ、オキシコンチン、類似する薬物が、2~3種類あるいはもっと多くが、数ヶ月間、数年間、断続的に与えられています。グレイ医師が患者のカルテをチェックしたとき、こうした処理を正当化する診断や検査結果を見出すことができませんでした。グレイ医師の上司への反対意見は無視されました。彼女は時々、麻薬を不適切に処方するよう命じられたと言います。今年早く、彼女はジム・ウェッブ上院議員(Sen. Jim Webb)と退役軍人援護局の監察官に懸念を伝えました。数週間後、彼女は解雇されました。医療センターは彼女を解雇した状況を議論するのを辞退しました。

 グレイ医師がハンプトン医療センターの麻薬治療方針の起源について尋ねたとき、彼女の上司は1990年代にそこで働いたリウマチ研究家、スティーブン・プロトニック医師(Dr. Stephen Plotnick)に始まると答えました。プロトニック医師は、麻薬の大量使用で一連の患者の死亡原因となったことで、昨年、医師免許を失いました。彼は1944~1999年までハンプトン医療センターで働き、ポーツマス・ナバル医療センターへ行き、昨年ヴァージニアビーチで開業しました。彼は薬物加療摂取で死んだ患者の遺族が起こした3件の医療過誤訴訟を決着させ、さらにいくつかの事件が地方裁判所で係争中です。彼はコメントの要請に応じませんでした。

 ジェニファー・パガドール医師(Dr. Jennifer Pagador)もハンプトン医療センターの方針に反対しました。パガドール医師は3ヶ月だけ勤務して、彼女が遭遇した麻薬使用量のレベルにショックを受けたため、2008年末に辞職しました。グレイ医師は、他にも数人の医師が同じ理由で辞職したと言います。パガドール医師は自分の意志で薬物スクリーニングをはじめ、一部の患者が処方された薬物に陰性であることを見出しました。これを彼女は薬物がコミュニティの中で違法に再販するために転用された兆候、と考えています。グレイ医師も、麻薬が転用され、再販されていると強く疑っていますが、その証拠は見つけていません。

 復員軍人援護局の監察官が2008年に43ヶ所の医療センターを評価したところ、その77%が前年中に薬物の転用が疑われることを見出しました。昨年、陸軍の退役軍人がミシガン州の退役軍人施設で医師から薬物を処方され、それを不法に分配して、25歳の水兵を過剰摂取で死に至らせたため、連邦刑務所での禁固30ヶ月を宣告されました。


 ざっとしたところを訳しました。記事はこの後も続き、かなりの情報が書かれていますが、書く時間がないので省略します。

 オキシコンチンは麻薬で、中毒性があり、アメリカでは100人以上が死亡して、問題となったことがある薬物です。

 事件は調査中で、監察官はウェッブ上院議員にそう報告しているようですから、いずれもっと詳しいことが分かるでしょう。

 おそらく、麻薬を与えることで、手っ取り早く患者の痛みを取り除き、仕事を楽にしようという発想から行われていることなのでしょうが、それによって患者が麻薬を過剰に摂取し、麻薬中毒者になってしまうのです。この背景には予算不足があるのかも知れません。人員が不足しているので、麻薬で症状を緩和させて対処しようとするのです。しかし、根本的な治療ではないので、患者は中毒者になるだけです。それは、彼らを黙らせておくには役に立つ方法なのです。こうした方法は、やがて非合法的に麻薬を患者に手渡す犯罪へと発展し得ます。この件の報告書が早く公表されることを望みます。

 いつものことですが、国民は兵士を「国の誇り」とおだてて、戦場に送り出しますが、負傷して帰ってくることは考えません。軍人病院が低劣なサービスのままに放置される問題は、いぜんにも、その本丸であるウォルターリード陸軍病院で起こりました(関連記事はこちら)。


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