カンダハル攻勢が支援活動へ変化

2010.6.11

 military.comによると、今月始まると予想されていたアフガニスタン、カンダハル州の軍事攻勢は、民間の再建活動を優先する戦略へ変わりつつあります。

 この戦略は地元民とアフガン政府が軍事作戦に反対したために採用されました。軍事的アプローチがより小さな地域であるヘルマンド州のマルジャで期待したほど機能しなかったという懸念もあります。今のところ、カンダハル州では新しい戦いはほとんどなく、「攻勢(offensive)」という言葉は追放されています。

 カンダハル州を担当するアフガン軍のシェール・モハンマド・ザザイ大将(Gen. Sher Mohammad Zazai)は「我々はカンダハルでは攻勢という言葉を使えません」「実際には協調作戦(partnership operation)です」と言います。南アフガニスタンのNATO軍指揮官、ニック・カーター少将(Maj. Gen. Nick Carter)は計画的な攻勢はないと示唆しました。「メディアは攻勢という言葉を選びました」「我々は確かに軍隊の増強について話しましたが、攻勢という言葉は用いませんでした」とカーター少将はいいました。

 名前はどうあれ、戦闘は今月起きていません。軍事的な役割がいつ始まるかは、見解が様々です。ザザイ大将は、戦闘が7月に始まり、8月中旬のラマダンに中断され、9月中旬に再開されるといいます。カンダハル州知事トリヤライ・ウェザ(Tooryalai Wesa)に近い、匿名を希望した人物は、戦闘は冬までは続かないけども、少なくとも10月に収穫期が終わるまで続くといいました。しかし米当局者は、軍事活動は派手ではないものの、米大使館、NATO軍、援助活動家といった民間人による、専門家の増派が静かに増えているといいます。

 アメリカは計画が後退していることを強く否定します。マルジャでは、軍事的な攻撃がタリバンを追い出し、行政サービスの素早い提供が後に続くよう計画されましたが、カンダハル州での手法は正反対です。民間人と活動家は増加した軍隊に守られ、主たる軍事活動よりも前に彼らのサービスを先に提供しようとしています。匿名の米軍当局者は、「家宅捜索型の軍事作戦はなりません」「あなたはアフガン国家警察の検問所がより沢山あるのを見るでしょうが、攻撃的な軍事作戦にはなりません。彼らは軍事作戦を見て、それが機能しないことを理解しました」。

 部隊の到着は予定通りです。2003年以来はじめて、アフガンにはイラクよりも多くの米兵がおり、イラクの約92,000人に比べ、約94,000人になりました。これらの半数はヘルマンド州都カンダハル州にいます。8月までにすべての兵士が到着する予定です。2月13日にはじまった海兵隊によるマルジャ攻撃は、「ムシュタラク作戦 フェーズ2」と呼ばれ、カンダハル州の攻勢は「ムシュタラク作戦 フェーズ3」と呼ばれました(フェーズ1は、昨年、ヘルマンド州のガルミシラ地区での作戦を指します)。いま、フェーズ3には新しい名前があり、「ハムカリ作戦(ダリ語で協力という意味)」と呼ばれています。カンダハル州の民間人の活動は昨年の8人から110人に増え、この夏に50以上へ増えます。 


 記事の後半はかなり省略して訳しました。

 どうやら、この夏に起きると予想していたカンダハル戦は、大幅に規模が小さくなるようです。急いでビジョンを描き直さなければなりません。

 カーター少将は、攻勢という言葉はメディアが勝手につけた名前と言いたそうですが、作戦名も変化しているのなら、軍隊内での認識が変化したのだと考えた方がよさそうです。作戦名はそれなりの意味があって設定されるものであり、単なる看板とは違います。

 マルジャ戦が期待はずれでしたから、人口がずっと多いカンダハル州では同じ手は使えないということでしょう。それでも失敗すれば、今後のアフガン政策は大幅に見直す必要があります。しかし、それを作戦が動き出してから気がつくのでは、すでに勝機を逃しているという感じがします。

 それから、今月になって戦闘が起きていないというのは、タリバンがまた戦いを避けて逃走したことを意味するのではないかと危惧します。勢力は温存され、彼らの支配体制は変わらないかも知れません。

 どうも、過去に繰り返されたゲリラ戦における失敗を繰り返しているという悪印象しか持てません。多くの場合で、正規軍は装備や訓練でより劣るゲリラに対して、正規軍用の戦い方を用いて失敗しています。簡単に民間人に紛れ込んで闘争できるゲリラには、むしろ戦力を多く見積もるべきです。

 しかし、どうせ失敗に終わるタリバン掃討で出る犠牲を減らすには、これはよい転換でしょう。いま考えれば、これは当然だという気にもなってきます。地図を見れば、マルジャとカンダハルの規模の違いは明らかすぎ、その広大な広がりに圧倒されるほどらからです。


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