記者会見に見るアフガンの絶望的状況

2010.6.1


 military.comが、NATO大使マーク・シドウェル(NATO Ambassador Mark Sidwell)とスタンリー・マクリスタル大将(Gen. Stanley McChrystal)がアフガニスタン問題の政治的和解について語りましたが、記者は違うことを質問しました。

 6月の最初の週に行われる予定の和平のためのジルガ(会議)は、タリバンを含む伝統的に分裂している派閥を一堂に会させます。シドウェル大使とマクリスタル大将は、こうした政治的な話題を持ち出しましたが、記者団の大半の質問は国を取り巻く混乱した治安状況についてでした。

 マクリスタル大将は、バグラム空軍基地とカンダハルへの最近のセンセーショナルな攻撃は地上戦よりも注目を浴びたと言いました。「敵は大勢で集まっていません」「これらの行為は作戦上の脅威ではありません」。バクラム基地への攻撃では「16人の武装勢力が鉄条網を通り抜けようとして死にました。彼らは本当はトップ記事を飾ろうとしたのであり、この環境に作戦上の変化をもたらそうとしたのではありませんでした」。2011年7月の撤退期限は困難だという現場からの不満にも関わらず、現在の戦略は順調であり、アフガンの治安へのアメリカの関与は長期間であると大将は言いました。「アフガンを守ることは長期的展望です」「我々は2011年以降も戦略的パートナーシップを持っています。しかし、私はその時点で縮小を始めるのが分別があると考えます」。マクリスタル大将は、イランが自国内で武装勢力を訓練したり、武器を与えたりして、武装勢力を援助している証拠があると言います。

 和解プログラムについて尋ねられると、マクリスタル大将は結果は混然としており、プロセスは長い時間が必要だと示唆し、「過去31年間、アフガンの人々は1つの側だけにつこうとしませんでした」「時間がかかるのです」と言いました。大将は、最近の事件を踏まえ、アフガン警察が撤退した後でタリバンが支配したパキスタンとの国境地帯バーゲ・エ・マタル(Barg-e-Matal)を明け渡すかどうかについて述べました。「1つの地域や1つのグループを他のそれと同じように考えるのは間違っています」「我々は地域を保護する戦略と能力をを実行する時、我々はそれらを行う命令と我が軍をどう運用するかを優先しなければなりません」。シドウェル大使は記者会見の最後に、政治的プロセスについて述べました。「当然ですが、我々は戦役の個々の面に一連の質問をもらいました」「私があなた方に集中するように訴えたいのは、これが次の数年間にわたって成功した結果へ向かっていくかどうかの背後にある本当に大きな推進力です」。


 パッとしない会見だというのが第一の感想です。進展がないのを、表現を工夫することで、どうにか乗り切っているとしか言いようがありません。もはや、アフガンへの介入は失敗するしかなく、担当者たちはどうにかして、状況があまり悪くないようにみせかけることに拘泥しているように見えます。マクリスタル大将、シドウェル大使どちらの言葉にも、状況が好転しているという実感がまったくありません。おそらく、現状は相当に悪く、発表できるようなこともないのだと想像します。これ以上コメントすることもなさそうですので、これまでにします。



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