NYの爆弾未遂事件でタリバンが犯行声明

2010.5.4


 military.comによると、生存が確認されたタリバン指導者ハキムラ・メスード(Hakimullah Mehsud)がビデオ声明で、米本土の主要都市を攻撃すると宣言し、ニューヨークのタイムズスクエアで自動車から爆発物が見つかった事件で関与を認めました。

 このグループは、このような攻撃を実行する世界的なインフラを持っていないため、米当局はパキスタンの武装勢力ネットワークとニューヨークの事件とのつながりを否定しました。しかし、このグループは、その腕を伸ばすのを助けるアルカイダのような武装勢力ネットワークとつながっています。2つのビデオはメスードが1月のミサイル攻撃で死ななかった強力な証拠です。

 武装勢力のメディアを監視する団体「IntelCenter」によれば、ビデオの重要部分は9分間近くです。その中でメスードは特にニューヨークの事件に言及せず、今年4月4日に話していると言い、「(神のご意思)は数日か1ヶ月で非常に近い。イスラム(社会)はアメリカで我らが戦士(fedayeen)の最も成功した攻撃を見るだろう」と約束しました。「Fedayeen」は通常、自爆犯を意味するので、ニューヨークの爆弾未遂事件とは関係ありません。メスードは1月に自分がミサイル攻撃で死亡したという、パキスタンとアメリカの主張に反論しました。

 全土の三都市に爆発を示すアメリカ地図が、明るみに出たもう一つのビデオで紹介されました。この部分は2分19秒間で、4月19日に作られたとされます。メスードと考えられる音声は、この組織のこれからの主目標はアメリカの都市で「よい知らせが数日か数週間で聞かれるだろう」と言います。別の武装勢力監視団体別「the SITE Intelligence Group」によれば、ビデオは1分11秒間で、特定の場所や自動車爆弾であることに言及せず、ニューヨークの事件を引用しました。音声は攻撃が成功したかのように述べ、前のパキスタンのタリバン指揮官バティトゥーラ・メスード(Baitullah Mehsud)のミサイル攻撃による殺害とイラクのアルカイダ指揮官アブ・オマル・アル・バグダッディ(Abu Omar al-Baghdadi)とアブ・アヤブ・アル・マスリ(Abu Ayyub al-Masri)の殺害へ復讐を呼びかけました。

 SITEはYouTubeにビデオが投稿されているのを最初に発見しましたが、ビデオは後で削除されたようです。武装勢力が攻撃の成功を見越してビデオを準備し、自動車爆弾が失敗に終わった後でビデオを削除したかは、目下明らかではありません。SITEが提供したビデオのコピーでは、パキスタンの主要言語であるウルドゥー語を話す未特定の声が「最近のアメリカでの攻撃に完全な責任」があると言います。ビデオはアメリカに対する不満を列挙します。ある場面は、攻撃はアメリカの「イスラム国への干渉とテロリズム」、特に2007年にイスラマバードの武装勢力が占拠する赤のモスクをパキスタン軍が襲撃したラルマジッド作戦(Lalmasjid operation)への対応だと言います。

 3つのビデオは独立して確認されていません。ニューヨーク市警本部長は失敗した自動車爆弾とタリバンを結びつける証拠はないと言いました。ビデオが本物だと分かれば、パキスタンのタリバンが東アジアの外を攻撃した最初の事例となります。パキスタンはこのネットワークを国内最大の脅威と考えており、軍はこの組織に攻勢をかけ、それは大きく弱体化されたと信じられます。

 パキスタンのタリバンは、自身がなんの役割も果たしていない、2009年4月にニューヨーク、ビンガムトンの大量銃撃で犯行声明を出したことがあります。また、昨年、アフガニスタン東部のCIA基地で7人が死亡した自爆攻撃を行なったと考えられています。メスードは自爆攻撃の志願者と共にビデオに登場しました。この志願者は当局が情報提供者として育成したヨルダン人で、アメリカに対する不満を並べました。

 最新のニュースでは、この事件の容疑者が逮捕されたと伝えています。ワシントン・ポストは、事件に使われた日産のパスファインダーを購入したパキスタン系米人ファイサル・シャザッド(Faisal Shahzad)は、JFK空港でドバイ行きの飛行機に乗ろうとしたところを逮捕されました。

 最初に爆破未遂事件を聞いたときは、イタズラの可能性もあると感じましたが、タリバンが犯行声明を出した記事を読むと、ひょっとすると本当だと思いました。記事にも書かれているように、これはタリバンの歴史において、かつてなかったことです。以前は、周到なテロ攻撃はアルカイダがやるものでした。同時多発テロの直前に、アフガンの北部同盟指揮官マスード将軍を暗殺した際は、記者に化けた工作員がカメラに仕込んだ爆弾を爆発させて、将軍を暗殺しました。こんな高度な工作はタリバンには不可能と思われていました。今回、あまりにも稚拙な方法でしたが、テロまがいの攻撃を行ったのは、タリバンも洗練され、海外で活動する術を身につけつつあることを示しています。オウム真理教も、最初は宗教ごっこをやっている変な人たちくらいに認識されていましたが、大規模な殺人事件を引き起こしました。今回の事件にタリバンが関わっているなら、それは以前からこのサイトで指摘しているテロの拡大が現実化したことを意味します。タリバンが攻撃のことを事前に知っていたのであれば、シャザッドは何らかの形でタリバンとコンタクトしていたはずです。それは数日中にFBIが明らかにしてくれるでしょうが、シャザッドがパキスタンに行かずに、タリバンとコンタクトして、犯行を実行したのなら、これはかなり危険なことです。以前から指摘しているように、一匹狼のテロリストが動き始めると、当局は察知しようがないからです。今回は、子供だましの爆弾でしたが、爆弾は割と簡単に材料を集めて、製造できるのです。それを考えると、いずれ本当のテロ事件を引き起こす一匹狼が登場する危険があります。CNNによると、シャザッドは単独犯だと主張しているようです。早く、詳細を知りたいところです。


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