米政府内で爆弾未遂事件の見解が食い違い

2010.5.11


 military.comによると、昨日詳解したエリック・ホールダー司法長官(Attorney General Eric Holder)とジョン・ブレナン対テロ顧問(John Brennan)とは他に、米政府当局者からニューヨークの爆弾未遂事件に関して異なる見解が出ています。

 ジャネット・ナポリターノ国土安全保障長官(Homeland Security Secretary Janet Napolitano)は、NBCニュースに「現時点では、単独犯以上の情報はありません」と述べ、デビッド・ペトラエス大将はAP通信に、シャザッドは「一匹狼」らしいと述べました。ブレナンは爆破未遂事件が、海外テロ組織が強力になったという見方を否定しました。「彼らはいま、こうした荒削りの攻撃を行おうとするほうへ追いやられており、訓練に関しては無能なことを示しています」。ブレナンは、パキスタン政府は調査に非常に協力的だけど、アメリカは誰がシャザッドを援助したのかを正確に知るのを望んでいると言いました。「パキスタンで活動するテロリストと武装勢力のグループは沢山あります」「そして、我々はパキスタン政府によって彼らが援助されていないことを確実にする必要があります」。パキスタン軍広報官、アザル・アッバス少将(Maj. Gen. Athar Abbas)は、パキスタンのタリバンが爆弾未遂事件に何らかの関与をしたことを疑っており、コメントを拒否しました。彼はこれについては民間政府の代表が答えるべきだと言いました。ブレナンは、シャザッドがアルカイダの聖職者、アンワー・アル・アウラキ(Anwar al-Awlaki)と接触したかどうかは言わず、彼のインターネット説法がイスラム過激派に人気があることを認めただけでした。ロバート・ゲーツ国防長官(Defense Secretary Robert Gates)は、パキスタンが過激派を探す努力を18ヶ月か2年前に始めたと述べました。ゲーツ長官は、オバマ政権はパキスタン国内で、同国政府が受け入れる訓練やその他の軍事活動を提供する方針を堅持していると言いました。「それは彼らの国です」「彼らは運転席に留まり、足をアクセルの上に載せています」。

 関連のあるコメントだけを記事から抜き出しました。このように米政府内部でも見解が異なり、具体的な事実が僅かしか示されていないので、シャザッドとタリバンが共犯だったかどうかは、まだ特定すべきではありません。直感では、タリバンの関与を考えますが、納得するには証拠が必要です。2月に事件の準備を始めるために帰国する前、5ヶ月間パキスタンにいたというシャザッドの自供はありますが、さらに裏づける情報が欲しいと考えます。

 というのも、この事件にタリバンが関与した場合、彼らが国際的テロ組織の領域に足を踏み入れたことを示すので、慎重に判断したいのです。普通、安全保障の世界では、テロ組織を活動範囲から「国内」「地域」「国際」の三種類に分けます。「国内」は国内だけで活動するテロ組織です。たとえば、「タミル・タイガー」はスリランカ政府によって壊滅させられましたが、彼らの行動目標からして、国内から出て活動する必要はありませんでした。こういうテロ組織は「国内」に分類されます。「地域」は複数の国にまたがって活動するテロ組織です。タリバンは最初はアフガニスタンのみで活動していると思われましたが、すぐにパキスタンにまで拡大していたことが分かりました。こういうテロ組織は「地域」に分類されます。これよりも大規模なテロ組織は「国際」に分類され、国際的テロ組織とよばれることになります。今回の爆破未遂事件にタリバンが関与していれば、彼らは国際的テロ組織の仲間入りをしたことになります。

 ブレナン顧問の発言からも、まだ確たる証拠が手に入っていない様子がうかがえます。もう少し待たないと、判断はできそうにありません。


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