司法長官がタリバン関与を公言

2010.5.10


 ワシントン・ポストによれば、エリック・ホールダー司法長官(Attorney General Eric Holder)が、パキスタンのタリバンが先週、タイムズスクエアで起きた爆弾未遂事件に関与した決定的な証拠があると述べました。

 ホールダー長官はABCで、「我々は今、パキスタンのタリバンが攻撃の背後にいるという証拠を発見しました」「我々は彼らが事件を促進したのを知っています。我々は彼らがおそらく事件に資金を与えたのを知っています。そして、犯人は彼らの指示で動いたのです」。彼の言葉はホワイトハウスの対テロ顧問、ジョン・ブレナン(John Brennan)によって繰り返されました。彼はCNNで「容疑者ファイサル・シャザッド(Faisal Shahzad)と、アルカイダに極めて近いテリク・エ・タリバン・パキスタン(Tehrik-e-Taliban Pakistan: TTP)が共に犯行を行った」と言いました。アメリカ生まれで、パキスタン育ちのシャザッドは取調官に、彼はパキスタンのタリバンに訓練され、命令を受け、ハキムラ・メスード(Hakimullah Mehsud)に面会したと述べました。しかし、メスードなどの上層部にあったという彼の主張については明らかではありません。資金を提供した者も不確定です。シャザッドは南アジアと中東で人気のある非公式の金銭振替ネットワークの「ハワラ(hawala)」から金を受け取ったかも知れません。ハワラはアルカイダや他のテログループと結びついています。パキスタンでは、当局が捜査の一環として、シャザッドにつながるかもしれない大勢の武装勢力を拘留しています。それにはシャザッドと彼の妻の両方の父親が含まれています。FBI捜査官がパキスタンにいて、同国の対テロ部門と共同作業をしています。

 シャザッドの自供については、すでにmilitary.comに報じられています。彼はワジキスタン(北と南どちら側かは不明)で爆弾製造の訓練を受けました。パキスタンは、この事件で12人を拘留しています。シャザッドの父はパキスタン空軍の高官バハール・ハク(Baharul Haq)だといわれています。

 この記事からはホールダー長官が少し先走っている印象を受けました。国内報道では、ごく簡単にホールダー長官がタリバンの関与を公に認めたとだけ報じられていますが、十分な証拠があることは確認されていないようです。メディアに対して重大な証拠がまだ開示されていない可能性もありますが、ホールダー長官が資金援助について「おそらく」と一歩退いた表現を用いた点が気になります。こういう場合、司法長官は非公開の重大な証拠を握っていると、勝手に想像すべきではありません。かつて、国内で起きたある事件で、著名なジャーナリストが警察筋の情報として、警察は重大な「隠し球」を握っていると、テレビで述べたことがありました。しかし、その事件の裁判では、それらしい隠し球が証拠として提出されることはありませんでした。このジャーナリストは、警察上層部から聞いた話を鵜呑みにして、垂れ流しにしただけだったのです。

 この種の情報は秘密にしなければならない理由はなく、特にアメリカのような国では、黙っていること自体が政府の汚点となります。そういう環境で、ホールダー長官が具体的な事実を示していないのは、まだ明確な情報が手に入っていない可能性ためかも知れないと考えるべきです。確実な情報が公開されるまで待つのが賢明です。それまでは、当局から出てくる情報をよく吟味することです。


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