天安事件に北朝鮮の関与が浮上

2010.4.23

 military.comによると、3月26日に黄海・白リョン島沖で沈没した韓国の哨戒艦「天安」(1,200トン)に関し、韓国軍が北朝鮮が関与したと見ています。

 朝鮮日報は国防情報司令部は、北朝鮮が小型の潜水艇による攻撃を準備しているという警報を、事件前に出していたと報じました。「人間魚雷」部隊は、魚雷か爆発物を目標と攻撃者を共に爆破するか、攻撃者が艇から逃げたあとで爆発する小型の潜水艇だと言われています。この攻撃は昨年11月に海上で起きた小競り合いの報復のためと見られています。天安の調査には数年かかるという専門家もいます。韓国海軍と統合参謀本部は、軍事情報を含むことを理由にコメントを拒否しています。連合通信は、韓国軍の情報将校が、米軍との共同情報分析に基づき、北朝鮮の魚雷潜水艇だと信じていると述べたと報じました。また、匿名の軍関係者の言として、天安が沈没した直後に、この報告書が青瓦台の大統領官邸に提出されたと言いますが、官邸側は否定しています。

 朝鮮日報の記事は短期間で削除されるのでリンクは示しませんが、特集記事を組んでいるので、是非読んでください。

 海底から引き揚げられた天安を見たとき、魚雷や機雷が沈没の理由だとしても、まったくおかしくないと感じました。現代の魚雷は艦のキール(竜骨)の真下で爆発し、いわば「船の背骨」を折ることで、艦を瞬時に沈没させます。沈没時の状況や引き揚げられた天安の破損状況も矛盾しません。北朝鮮は人間が操縦する攻撃潜水艇の部隊を持っています。しかし、領海内に設置していた北朝鮮の機雷が浮遊して、韓国領海に流れ着いた可能性もあります。私はこの方が現実的だと感じます。

 北朝鮮が潜水艇による攻撃を行ったと仮定して、これが北朝鮮の韓国に対する宣戦布告かというと、おそらく、そうではないのでしょう。北朝鮮からすれば、去年の大青海戦の復讐を意味するだけなのです。11月10日に、越境してきた北朝鮮軍の警備艇に対して、韓国軍の高速艇が警告射撃を行ったところ、北朝鮮艇が攻撃してきたので、高速艇が反撃して撃退しました。北朝鮮側には死傷者が出たと考えられています。普通なら、このような攻撃は全面戦争の引き金のために用いられるのですが、北朝鮮は韓国が武力による報復を行わないと踏んでいるのです。アメリカが介入してこない程度の攻撃に限定すれば、韓国に武力攻撃を行うことが可能だと考えているのです。いわば、身内だからこそできる行動です。

 しかし、これもリスクの伴う賭けであり、国家元首の健康不安を抱える状況でやるかという疑問があります。

 韓国政府は北朝鮮の行為を疑いながらも、慎重に真偽を見極める必要があります。状況証拠だけから判断して、それに誤りがあれば取り返しがつきません。これは、大量破壊兵器があるという主張が誤りであったアメリカのイラク侵攻を見れば理解できることです。もし、原因が機雷であり、北朝鮮側から流れてきたものである可能性は否定できません。以前に、ロシアから海軍施設の設備が日本に漂流してきたことがあります。このように、整備不十分な海軍なら、機雷の管理も不十分かも知れません。だから、韓国政府は軍が報告を出しても、すぐに対応せず、精密な調査に時間をかけているわけです。数年かけて調べている間に、北朝鮮が崩壊するなら、それでよいわけです。 しかし、このまま何もしないことは、北朝鮮を優位に立たせる危険もあります。こうした難しい問題を、いま韓国政府は時間をかけて検討しているのだと考えます。だから、韓国が直ちに武力を用いた反撃を行うことはないでしょう。


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