ファルージャで新生児に先天性異常が激増

2010.3.5


 BBCが衝撃的なレポートを報じました(記事はこちら)。イラクのファルージャの医師たちが、新生児に高レベルの先天性欠損症が出現していると報告し、イラク侵攻後に米軍が使用した兵器が原因だと主張しました。

 先天的に心臓に欠陥のある新生児はヨーロッパの13倍の高率です。米軍はこの地域の新生児に先天性の障害を示すいかなる公的なレポートもないと主張しています。BBCのジョン・シンプソン(John Simpson)は、ファルージャの病院を訪問し、小児科医のサミラ・アル・アニ(Samira al-Ani)は彼に1日に2〜3の事例、主に心臓欠陥を見ていると言いました。BBCの特派員は麻痺や脳障害を持つ子供も見て、1つの身体に3つの頭部を持つ赤ん坊を撮影しました。シンプソンはファルージャの当局者が何度も女性に子供を作らないように警告するのを見ました。医師と親たちは、米軍が6年前にファルージャで使った最先端の武器が原因だと信じています。イギリスに拠点を置くイラク人研究家マリク・ハムダン(Malik Hamdan)は、ファルージャの医師たちが「大量で前例のない数」の心臓欠陥、神経系の欠陥を目撃していると言いました。彼女はこの街のある医師は2003年以前の先天性欠損のデータを比較し、2ヶ月に1件を見ていたのが、現在は毎日見ていると言います。ハムダンは、今年1月からのデータに基づくと、先天性の心臓欠陥は1,000件の出産に対して95件で、これはヨーロッパの13倍も高率です。米軍広報官は、公衆衛生は常に非常に深刻であり、特定の健康問題を生んだ環境問題を示す研究はなく、IEDを含む不発弾は認識済みの危険だと述べました。

 引用した記事のビデオ映像で見られる状況は極めて深刻です。指が曲がったり、指が6本ある、腕のない赤ん坊を、この映像は示しています。しかし、これだけの異常が起こるような化学物質がどんなものかが想像できません。化学兵器は市街戦ではあまり便利ではないので用いられないと考えられます。使用が疑われた白リン弾で、この種の問題が起きるとは聞いたことがありません。劣化ウラン弾がこれまで知られていない問題を引き起こした可能性もありますが、結論はできません。何らかの公害が原因かも知れません。しかし、米軍広報官のコメントは冷淡すぎます。アメリカ国内でこんな健康被害が起きて、こんなコメントを当局者が出せば、必ず激しい非難にさらされるはずです。米軍は最初から原因を調べるつもりもないようですから、これはイラク当局やNGOなどが調査して、原因を解明するしかないでしょう。なにしろ、6年前の攻撃が原因だとすれば、当時、少女だった女性が成長して、妊娠したことで障害が出た可能性があります。該当する女性がファルージャ戦の時にどこにいたか、そこでどのような攻撃が行われたかを含め、広範な追跡調査が必要です。

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