強襲揚陸艦ワスプ艦長も解任

2010.3.22


 最近起きた艦長の解任事件により、過去の事件が掘り起こされました。military.comによれば、昨年8月、米海軍の強襲揚陸艦ワスプ(Wasp)のマイケル・ホーリー大佐(Capt. Michael Hawley)が、懲罰委員会(captain's mast)解任されたことが明らかになりました。

 ホーリー大佐がデスクワークに再配置された理由については明らかにされていませんが、海軍監察総監部の報告書は、6件の個人的および職務上の違反行為であるとしています。さらに1ダース分の立証できなかった申し立てを含めて、違反行為の説明は40ページにのぼります。この件について、ホーリー大佐はコメントを拒否しました。申し立ては2008年10月に国防総省監察官のホットラインに報告され、大佐は5ヶ月後に艦を降りることになりました。調査中、ホーリー大佐を含めて、1ダース以上の人たちが事情を聴取されました。

 2007年のワスプ派遣中に、ホーリー大佐は指揮官としての立場を、特定の販売者がワスプの乗員・士官に、絨毯、スーツ、散弾銃を販売促進するために利用しました。ホーリー大佐は艦内のインターコムをしばしば、バーレーンのテーラーからスーツを買うように奨励するのに使い、トルコの銃器業者についても同じようにして、ワスプのホームページにもこの業者に散弾銃を注文するためのリンクを設けました。売り上げの処理は艦の空調部門の上級兵曹に任され、乗員2名毎に1丁にあたる、746丁が販売されたことを記録は示しています。ホーリー大佐が購入した3丁の銃にいくら払ったかという調査官の質問に、大佐は憶えていないと答えました。他の乗員よりもよい条件だったかという質問に、大佐はそうとは思わないと答えました。

 ワスプの将校たちは2007年10月、バーレーンでの上陸許可中に絨毯の販売会に参加するよう要求され、商人が商品を説明する間、食べ物と飲み物の無償提供を受けました。将校たちは絨毯を買うように圧力をかけられ、彼らが買い物をすることで、ホーリー大佐は無料の絨毯を受け取り、自分の買い物で値引きを得ました。

 ワスプが2007年6月に、中東に派遣される2〜3ヶ月前、カナダのハリファックスでドックに入った時に別の違反行為が起こりました。カナダ海軍の夕食会の後で、ホーリー大佐は式典用の塩コショウのシェーカーを着服しました。大佐は当初、これを否定しましたが、妻と話した後で、シェーカーを指揮官用のチャレンジコインと交換したのだと認識すると述べました。しかし、他の乗員は、この夕食会で贈り物の交換は行われなかったと言いました。報告書はシェーカーにはほとんど価値はないが、窃盗は小さく評価されるべきではないとしました。調査官はホーリー大佐が同様の不正行為を大目に見ていない点を指摘しています。ワスプがコロンビアにいたとき、15ドルのワインを盗んだ伍長に対して、2ヶ月の給与減額、45日間の行動制限と追加作業を命じました。

 同じ月にニューヨーク市で行われた米海軍の誕生祭(Fleet Week)の間、ホーリー大佐はワスプがいるニューヨーク市から郊外にあるトランプ・ナショナル・ゴルフクラブ(Trump National Golf Club 不動産王ドナルド・トランプ氏がオーナー)まで、無料でヘリコプターに乗りました。ホーリー大佐は、艦を離れることを文書化せず、同艦の士気・福祉・レクリエーション委員会に対して、彼がゴルフ・トーナメントで勝った500ドルの賞金を与えさせました。1ラウンドに250ドルかかるコースで、ホーリー大佐は無料でゴルフをプレイしました。ゴルフに招待された乗員はいませんでした。誕生祭を担当する提督が参加しようとしましたが、キャンセルしました。ホーリーの部下が、乗員が大佐に悪印象を抱くかも知れないと言って、参加を思い止まらせようとしたと報告書は強調しています。それは別として、調査官は、大佐の行為が職員の地位にいる者が贈り物を受け取ることを禁じる連邦のガイドラインに違反し、20ドル以上の価値がある贈り物を受け取れないと民間グループに伝えるよう命じる連邦の方針にも違反するとしました。

 ホーリー大佐は、しばしば薬物やアルコールの中毒で回顧された水兵の離隊を遅らせました。これは「ゴールデン・アンカー(The Golden Anchor)」として知られる賞を獲得する資格を得るために、特定の四半期において艦の維持に関する統計を改善する慣習でした。

 今回の事件はさらにレベルが低い点で深刻だと私は考えます。こうして見てくると、何度も同様の事件が起こることからして、米海軍の艦長にはこういうタイプが確実に存在することを認めなければなりません。これは米海軍のイメージを一変させるような重大な事件です。軍事を考える上では、これは興味深い問題です。なぜ、こうした艦長が何人もできあがるのか、その原因を追及したくなるからです。彼らが置かれた権限や自由にできる権限が、彼らを奔放にさせるのでしょうか?。あるいは、長引く対テロ戦争が、艦長たちの心理を狂わせているのでしょうか?。心理テストなどを用いて、彼らの心理を調査したくなります。米海軍はもちろんそれを行うべきでしょうが、現場の最高指揮官の心理テストはあまり歓迎したくないところでしょう。しかし、原因を追及して、改善すべきところは改善すべきなのです。米海軍がどんな対策を取るかが気になります。案外、問題が放置されるような気もします。


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