特殊作戦部隊がマクリスタル大将の指揮下に

2010.3.17


 アフガニスタンに駐留する米軍の特殊作戦部隊の大半は、現在、スタンリー・マクリスタル大将(Gen. Stanley McCrystal)の直接の指揮下にあると、ニューヨークタイムズ紙に答えました。

 マクリスタル大将は、この決定は民間人へ多くの被害が出ていること、特殊部隊の兵士がカウボーイ(荒くれ)みたいに活動していることへの対応だとしています。「しばしば食い違いが起きています。片方の手があることをやって、片方の手が別のことをすれば、両方が正しいことをしていても、よい結果は得られません」。アフガン軍広報官ザーヒル・アズィミー少将(Maj. Gen. Zahir Azimi)は、マクリスタル大将が、一部の米軍部隊が民間人の被害を最小限にするという自分の命令に従っていないという懸念のために行動していると述べたと言いました。「これらの特殊部隊はこの国では誰に対しても説明責任がありません。しかし、マクリスタル大将と我々は彼らが行った間違いのために責任を負いました。特殊部隊が何か問題を起こしたときはいつも誰が行くか分からず、混乱して、誰が責任を負っているかが分からないのです。マクリスタル大将の新方針は若干の成果をあげ、昨年は米軍に起因する民間人の死者は28%減りました。国連によると、連合軍に起因する民間人の死者は596人で、アフガンと国連当局はこれらの大部分について特殊部隊を非難しています。アフガン議会防衛委員会の委員長モハメッド・イクバール・サフィー(Mohammed Iqbal Safi)は「民間人の犠牲の大部分に特殊部隊が関係しています。我々はいつもアフガニスタンで別の部隊が守るルールに彼らが従っていないことを見出しています」。国連援助派遣団の人権事務所は2009年の民間人保護レポートで「これらの部隊は頻繁に、僅かのあるいはまったく説明責任なしに作戦活動を行い、地域の怒りと憤慨を深刻化させています」と書いています。(民間人保護レポートはこちら

 マクリスタル大将の通信担当幕僚副長のグレゴリー・J・スミス海軍少将(Rear Adm. Gregory J. Smith)は、特殊作戦部隊に不当な非難を与えることについて警告しました。夜襲は危険でほとんどが夜間に行われるため、大抵はより高度に訓練された特殊グループによって行われます。1月にマクリスタル大将は夜襲に関する制限規則を発しました。スミス少将はマクリスタル大将は特殊部隊に対する新方針を「2〜3週間」以内に実行するよう命じ、それが論評のために軍隊内で回覧され、正式に公表されるまでの間、マクリスタル大将は既にそれを実質的に実行させました、と彼は言いました。抑留者の任務と特殊作戦部隊のごく一部は、この方針から除外されていると、スミス少将は言います。これは陸軍のデルタフォースや海軍のシールズのことと考えられます。かつて、アフガンの特殊作戦部隊は本来の司令部の指揮系統から分離されていました。昨年、マクリスタル大将が着任して、NATOと米軍の指揮系統を自身の下に統合した後ですら、この通りでした。

 最近3件のケースは特殊作戦部隊に対する懸念を例示しています。

2月21日、ウズルガン州で小規模な特殊作戦部隊がタリバンのグループが自分たちの方に向かってくるのを聞きつけ、航空支援を要請しました。攻撃ヘリが3台のトラックに乗った27人の民間人をタリバンと見間違えて殺害しました。

2月12日、パクティア州ガルデズに近い村で、米軍特殊部隊と組んだアフガン警察特殊部隊は、2人のタリバン容疑者を捜すために夜遅くに家屋を襲撃し、地元警察署長と地区検察官がカラシニコフ銃を持って捜査のためにやってきたところを殺害しました。彼らを助けるために来た3人の女性(2人は妊婦)も殺害されました。ISAFの発表では、3人の女性は縛られ、明らかに処刑スタイルで殺害されていました。スミス少将は、2人の罪のない男性が死んだことに遺憾の意を表明しましたが、女性の死は襲撃の数時間前との見解を示しました。

 私には、3件の実例の内、前者2件が問題なのだと思われます。女性たちは、現場付近にいた武装勢力によって殺害されたと推定できます。最初の事例は、従来通りの空爆の方法でやったところ、誤って民間人を殺害しました。現場だけで判断せず、空撮映像を上級指揮官に見せれば、それが目標ではないことが分かったかも知れません。夜襲の事例では、地域の治安当局に夜襲を連絡し、共同であたっていれば防げたと考えられます。

 特殊部隊は軍隊内でも秘密に包まれた組織で、彼らが何をやっているかは、他の部隊には分からない仕組みになっています。かつて、民間人に被害が出たとき、米軍から間の抜けた、不適切なコメントが出ることがありましたが、それにはこうした構造が関係していたのかも知れません。マクリスタル大将自身が特殊作戦部隊の出身者ですから、こういう問題を理解し、解決するのは適しています。民間人の死傷者を減らすのは、今年が正念場です。今年一年で激減させられれば、アフガン国民の意識が変化するかも知れません。そのために、マクリスタル大将は特殊作戦部隊を特例としないことにしたのです。ごく一部の部隊は以前として秘密のままですが、彼らがどのような意識を持って、犠牲を減らそうとするかに注目します。

 また、昨日紹介したような、民間軍事会社による活動を容認していれば、正規軍ばかりに制限を与えても意味がないということにもなりかねません。CIAもまた、秘密に包まれていて、マクリスタル大将にも彼らが何をやっているかは分からないのです。常に、問題が起きてから、彼らは会議を開き、そこで真相が明らかになるわけです。国防総省もCIAも巨大な組織で、本当に効率的に動けているかどうか、誰が評価しているのでしょうか?。国防長官やCIA長官でしょうか?。大統領でしょうか?。あるいは、そんな評価は現場レベルでやれば十分なのでしょうか?。私は常に疑問を感じています。


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