NATOはタリバンを買収せず

2010.2.5


 military.comによれば、アンダース・フォー・ラスムッセンNATO事務総長(Secretary-General Anders Fogh Rasmussen)が、NATOはタリバンをアフガニスタン政府につくよう買収する計画はないと述べました。

 ハミド・カルザイ大統領(President Hamid Karzai)は、水曜日にサウジアラビアを訪問し、タリバンの説得を依頼しました。サウジはタリバン政権が2001年にアフガンから追放されたとき、政権を認めた数少ない国の1つでした。ラスムッセン事務総長は、多くの武装勢力は宗教やイデオロギー的理由によって戦ってはいないと言いました。「彼らは生計を立てるためだけの僅かな金のためや,他の不満のために戦います。彼らに提供する物は新しい人生のチャンスです」。

 批評家はタリバンを転向させる計画が長い間存在しながら効果がなく、タリバンに二度と戻らないという保証なしに、最も低レベルの戦士だけを惹きつけてきたことを指摘しました。この間にも、タリバンは増加し続けました。2004年にNATOはアフガンにいるタリバンを400人と見積もりましたが、昨年までに約25,000人へ増加し、今年初期の最新の見積もりでは30,000人ちかくとされています。トルコの「国際関係および戦略解析センター(the Turkish Center for International Relations and Strategic Analysis)」のシアン・オーガン(Sinan Ogan)は、タリバンが過去6年間に政治ネットワークを拡大し、国際軍の撤退を含む彼らの要求条件が満たされない限り、交渉を受け入れないだろうと述べました。しかし、カルザイ大統領と交渉のテーブルに着くだけで、武装勢力にとっては大きなプロパガンダ上の勝利だと言いました。また、いかなる合法性を得ることでも、タリバンをさらに強力にし、カルザイや欧米に命令し始めるだろうと言います。

 ラスムッセン事務総長が言いたいのは、タリバンの買収はアフガン政府に任せるという意味なのでしょうか?。金は出すが、手は動かさないということなのか…?。汚職まみれのアフガン政府に丸投げでうまく行くのでしょうか?。こうした資金が不正にアフガン政府関係者の財布に入る可能性はないのでしょうか?。ロンドン会議は「やることはやりました」という言い訳のための会議だったのではないでしょうか?。こういう疑いは益々ふえていきます。

 オーガン氏が言うのは最悪のシナリオで、これが最もありそうな未来です。紛争というものは、当事者に勝利か敗北なしに一方の要求を受け入れさせないものです。アフガン政府が勝利したわけではないのに、タリバンが妥協することはまず考えられません。オバマ大統領はアフガンからの撤退を予定していますから、外国の軍隊が大幅に減るか、いなくなった段階で、タリバン勢力がアフガンを席巻することになります。それまでに、アフガン軍・警察を増強できればよいのですが、それも疑問です。よいニュースが本当になくなってきました。有効な手段を打ち出すこともできない状況です。以前にも指摘していますが、PLOのように、テロ組織が政府組織として国際社会から認められる未来がやって来る予感がします。こうしたことを何度も歴史が繰り返していることを考えると、このような問題を起こさない戦略が必要です。第三世界の貧困や不満を減らしていくことが、こうした問題を起こさせないポイントなのは,誰の目にも明らかなはずです。しかし、先進国は未だに自分たちの競争に忙しく、この分野は人気のないままです。


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