韓国内部での批判は行き過ぎ

2010.12.4

 中央日報によると、韓国軍自走砲の砲弾が北朝鮮軍の砲台に命中しなかったことで、韓国で批判が湧き起こっています。

 ハンナラ党の金武星(キム・ムソン)院内代表は2日、「(K-9砲弾が落ちれば)周囲50mが焦土化すると話していたが、田畑には少し焼けた跡しか見えなかった」と指摘しました。

 東亜日報が、韓国軍関係者の話として、対砲レーダーが砲撃時に作動しなかったのは、北朝鮮軍が妨害電波として使った電磁パルスのためと報じました。

 military.comによると、韓国の食糧、農業、林業、漁業省が延坪島の漁業禁止を解き、さらに漁業期間を12月末まで1ヶ月間延長しました。


 韓国軍がどんな説明をしたかによりますが、自走砲の砲弾が1発で周囲50mを焼き尽くすようなことはありません。TNT火薬を用いた砲弾ならこれくらいの範囲に破片をまき散らし、装備を破壊して、人員を殺傷します。それは数秒間しか目に見えません。弾痕だけが火砲の戦果だと考えるのは間違いです。韓国人はこの事件で一喜一憂しすぎです。常識的には、K-9自走砲の弾着が衛星写真の外にまでずれる可能性は高くはありません。写真内に着弾して、確認できないだけかも知れません。

 別の報道では、ロケットランチャーは砲台ではなく、田畑の中に展開した方が自然だという意見がありました。デジタルグローブ社の写真では、畑についたタイヤ痕までは見えないというわけです。どれが本当かはまだ分かりません。

 戦争は膨大な暴力の応酬です。時には効果を生まない攻撃も起こります。可能性が低い悲劇的な事件も起こります。暴力により相手の意志を阻止するのが戦争です。一つの戦いで負けても、最終的な政治的勝利を得ればよしとすべきなのです。いまは韓国の内部で争うべき時ではなく、むしろ団結すべき時です。そうしたリーダーシップを発揮する人が必要なのに、誰もその役を引き受けようとしていないようです。

 対砲レーダーへの妨害電波は、事件当日に分かっていたはずのことで、早急に発表して欲しいことでした。韓国軍や政府の発表には、肝心なものが含まれていなかったり、余計なものもあったりで、改善を求めたいところです。これでは、北朝鮮と大規模な戦争になったとき、国際社会との連携が難しいかも知れません。軍事独裁時代の何でも秘密にするやり方の名残かも知れません。

 延坪島のカニ漁のために操業期間が延長されました。カニ漁は期間が短いはずですから、漁民の生活のためにも再開せざるを得ないというところでしょう。このように、経済大国は戦争をやりにくいのです。



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