北朝鮮軍は砲撃演習に反撃せず

2010.12.20

 韓国軍は今日午後2時30分〜午後4時4分まで延坪島で実弾砲撃演出を実施し、北朝鮮人民軍最高司令部は「軍事的挑発にいちいち反応する価値はないと感じた」と発表し、これに武力で反撃しませんでした。

 西海沿岸で北朝鮮軍は海岸砲の砲門を開いたり、120mmと240mmの放射砲に似せた模擬砲を配備し、戦闘機を地下格納庫から出して地上に待機させるなどの対応を行いました。


 報道されたことからポイントを抽出しました。

 北朝鮮はもっと強いメッセージを出すかと思っていましたが、かなり後ろ向きの発表で終わってしまいました。北朝鮮は対抗措置を取りながら、急に気が変わったとでもいうのでしょうか?。そんなはずはありません。言っているとおりに韓国に何倍もの反撃をすれば、韓国はさらに倍返しを行います。これが全面戦争に発展しないまでも、数回の攻撃の応酬により、この方面の北朝鮮軍に少なくない被害が出かねません。そんなことになれば、韓国との戦いで北朝鮮が負けたという情報が国中に広がり、北朝鮮政府は国民に対する威信を失いかねません。将軍様の命令に従ってさえいれば生きられるという神話が崩壊してしまうのです。これは国家の統率を損ないかねない事態です。将軍様と後継者の権威を守るには、大きな嘘をついてでも、大きく負けた事実は作らないのが、北朝鮮にとっては重要なことなのです。

 北朝鮮の対抗措置については、韓国やアメリカは偵察能力を知られないために、詳細までは発表しません。報道されているのは差し障りのない範囲のことだけです。それでも、これらの動きは北朝鮮軍の活動能力を暗示するものです。

 それにしても、北朝鮮軍が放射法(多連装ロケット砲)ばかりを用い、榴弾砲を準備する気配がないのが気になっています。Google Earthを見る限り、ケモリ付近には自走砲用の砲座が沢山あります(明日、砲座のkmzファイルをアップロードします)。これらを使う気配がないのは、北朝鮮軍の榴弾砲やカノン砲に何か問題が出ていることを疑わせます。ごく標準的な砲弾までもが生産できないとか、輸入できない事態になっているのかと思わずにいられません。

 それから、連合ニュースが配信した「通常の射撃訓練で砲弾は北方限界線(NLL)の南側10km以上に落ちる」という記事の数字を「10m」と書き間違えて報じている記事があるので注意してください。「10m」という短距離では、北朝鮮が領海内に落ちたかどうかを明確に確認できないので、事実上、完全な挑発行為です。


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