アフガン報告書が「問題は困難も進展」

2010.12.17

 military.comによると、バラク・オバマ大統領(President Barack Obama )が、公表されたアフガニスタン戦争についての報告書についてコメントしました。

 それは非常に困難な努力であるとしながらも、大部分は米軍の努力のおかげで、重大な進展があったと強調しました。

 アフガンとパキスタンのアルカイダ指導者たちは、9年前にアフガンから消えてからどの時点よりもプレッシャーにさらされているとオバマ大統領は言いました。

 「徴募はより難しく。移動はより難しく。訓練はより難しく。攻撃の計画と実行はより難しくなりました」「簡単に言えば、アルカイダはしゃがみ込まされたのです」。

 ホワイトハウスが公表した5ページのアフガン報告書の要旨は、依然として、アメリカと同盟国の支援が続かなければ後退しかねない脆い進展をみた国を描写しました。アルカイダは国境地域に押し出され、タリバンも弱体化したとしています。

 大統領と副大統領が記者会見を去ったらあとで、ロバート・ゲーツ国防長官(Secretary of Defense Robert Gates)とヒラリー・クリントン国務長官(Secretary of State Hillary Clinton)が質問に答えました。

 アメリカが最終的にアフガンから去ったあとでアフガンが何らかの進展を得られると考えられる理由を聞かれたゲーツ国防長官は、アメリカはアフガンのすべての問題を解決することを望んだり、そうする必要はないと言いました。「私はこの鍵は我々の目標を慎重に特定する。ことだと思います。我々のゴールを勝ち取ったり、達成するには何が必要ですか?」「我々の目標は…21世紀のアフガンを建設することではありません。我々の目標は、この地域で唯一の汚職が許される国ではありません。我々の目標は我々のパートナーとアフガンと協調し、アフガンが自力で対処できる程度にタリバンの軍事と暴力の力を後退させ、地域、地区、州のレベルで治安の最低限の能力と争いの解決、できれば徒歩で1時間以内の診療所を提供することです。「我々は大きすぎる野心を抱いたり、達成できないゴールを設定したくありません」。

 クリントン国務長官は、今週亡くなったリチャード・ホルブルック特使(Richard Holbrook)の言を引用し、アフガン戦争の軍事的な解決はないだろうと言いました。唯一の現実的な解決は、外交的な解決策だけでしょうと彼女は言いました。「我々はアフガン政府と共にタリバン戦士の和解と復員のために活動しています」「我々の考えでは、これはアフガンが主導する進展でなければなりません」。


 発言を中心に記事をまとめました。

 前から言っていますが、オバマ大統領は増派でアフガン問題が解決するとは考えていません。増派して結果を出し、国内の反対派が納得しないまでも反対しない状況を作り出し、軍を撤退させるのが狙いです。法外な金がかかり、成果のあがらない戦争を無制限に意味ないのです。ブッシュ政権にできなかった「戦争の中止」をオバマ大統領はやろうとしているのです。

 それにしても、ゲーツ国防長官とクリントン国務長官とが、大統領の意向をしっかりと引き取ったコメントをしているのに感銘を受けました。大統領の意思と、まったくぶれていないと思いました。

 こうした政治家の発言は純粋な軍事分析とは違い、ワシントン用語で埋め尽くされていることに注意してください。オバマ政権が今やっているのは、あまり強い政治的なダメージを受けずに、アフガンから撤退することです。オバマ大統領はそのために発言していますし、他2人の閣僚も同じです。

 実質的にはアフガン政策は失敗しています。それは前政権が目標が不明確な軍事活動を承認したためでした。本来なら、軍人たちが反対すべきだったのですが、米軍のような民主国家の軍隊は基本的には政治家が言うことを実現することに集中します。このため、政治家が誤った判断をすると軍隊も誤るのです。同時多発テロの報復をしようとしたのが、ブッシュ政権の最大の誤りでした。それが国民の望みだと考え、実現しなければ政権の存在価値が疑われると考えたのです。報復が無意味なことはシェークスピアが「ハムレット」の中で描いているほど古典的な常識ですが、目の前で大勢が無残に殺されると誰もが正気を失うのです。これは時代劇などで報復を見慣れている日本人にも反面教師となるべきことです。

 オバマ政権があまりにも正直にこうした問題を論じれば、それは政治的な自殺につながります。政敵からは、前政権に責任を転嫁していると批判されますし、海外におけるアメリカの威信も傷つきます。そこで、突っ込みにくい形で状況を説明し、180度転換したアフガン政策があまり変わっていないように見せかけるのです。これはアフガン撤退という最大の目標を達成するための政治的な嘘です。軍事研究家が同じことをするのは間違いですが、オバマ大統領は政治的には正しいことをしているのです。

 私は、これまでのところのオバマ政権のアフガン政策は成功していると考えています。あとは、できるだけ多くを期日通りに撤退させることです。

 この報告書そのものやそれに関する記事についても、後で書きたいと考えています。ホワイトハウスの記事はこちらです。ビデオ映像付きです。



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