海保内のビデオ閲覧は問題なのか?

2010.11.7

 今日になって、石垣海上保安部で中国漁船衝突事件のビデオを編集したパソコンは、部内者であれば誰でも見られたという報道がありました。

 これだけなら、海保の情報管理が甘いとは言えません。取り締まりの状況を撮影したビデオは部内で共有するのが当たり前です。これを見られないのなら、そもそも洋上での取り締まりを業務として行えませんし、新人職員の教育すら不可能になります。

 この段階でも、海保職員が意図的に漏洩したと断定することはできません。職員が自分のパソコンにデータをコピーして作業することは日常的に行われていたと言います。編集は事件後すぐに行われたといいますから、この段階では船長を釈放しておらず、職員が勉強のためにコピーして持ち帰ったデータが、私物のパソコンからWinnyなどのファイル共有ソフトウェアにより、意図せずして漏洩した可能性があるからです。衝突事件は9月7日に起こり、中国首相からの釈放要求があったのは同月22日、船長が釈放されたのは同月24日です。衝突事件が起きてから2週間ほどは、事件は通常の事件として海保職員に認識され、ビデオ映像もそのように扱われていたと言えます。

 また、海保職員が意図的に漏洩したのなら、あとでYouTubeのデータを削除する必要はないように思われます。世間に真相を広く知らせるのが目的ならば、わざわざ自分で削除する必要はありません。また、再度アクセスすることで、自分を特定される危険をさらに冒すことになります。しかし、データを入手した第三者が、それが本物かどうかを確かめたくてYouTubeに投稿したのなら、目的を達したのですから削除しても構わないと思うかも知れません。ハッカーなら、身元を特定されにくいアクセス方法を使えるでしょう。海保にネットワークを熟知した人がいるかどうかは知りませんが、そこまでやる人がいる可能性は低いように思えます。

 漏洩の可能性は他にもいくつか考えられるので、軽々に断定すべきではありません。また、一部報道では、漏洩した映像の字幕はオリジナルと少し違うと言います。どのように違うのかは不明ですが、そうした細かい部分も含めて確認・調査が行われるべきです。

 海保にビデオが公開されたことを称賛し、犯人を捜さないように求める電話や電子メールが多数寄せられていると報じられていますが、現段階では海保職員が意図的に漏洩したとは言えないのですから、こんな要求は、そもそもが非合理です。近頃は、こういう簡単に影響され、先走ったことをする人が目立ちます。多分、自分は正義感が強いつもりなのでしょうが、下手な正義感がまき散らす迷惑の方こそ問題です。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.