米軍の離婚率の増加は止まったか?

2010.11.20

 military.comによれば、過去5年に渡って徐々に上昇してきた米軍の離婚率が今年は横ばいのままです。

 国防総省当局者は、軍の結婚生活を支援するプログラムが10年近い戦争と家族のストレスをよそに機能し始めていると言いました。「全軍が夫婦同士の家族の絆を強め、濃密にすることに焦点を置いた様々なプログラムを持っています」「我々は、これらのプログラムが戦地派遣が結婚生活にもたらしたストレスを緩和するのに役立つと考えています」。

 不朽の自由作戦が始まって以来、2001年に2.6%だった離婚率は、2009年に3.6%に増加しました。国防総省の統計によれば、2010年の離婚率は3.6%のままです。

 一部の軍人家族の研究家と調停人は、国防総省はまだ大喜びすべきでないと言います。彼らはこれが一時的なものではないかと危惧しています。

 米陸軍は2011年に約90億ドルを「陸軍家族契約(Army Family Covenant)」プログラムに注ぎ込む予定です。このプログラムは、家族のメンタルケア、派遣中の無料の自動保護、基地内住宅の改善のようなサービスを網羅します。各軍は結婚生活支援プログラムを持ち、多くは従軍聖職者が運営します。最大のプログラムを持つ陸軍現役は、2011年度に7億ドル以上を「強い絆(Strong Bonds)」プログラムへ充てる予定です。デネバ大学の研究は、強い絆プログラムは、に参加した夫婦は、参加していない夫婦よりも離婚率が33%少ないことを示します。

 しかし、離婚に関する数字を深く検討すると、否定的な傾向が見えます。全体の数字は安定していますが、下位集団は過去の年に似て、僅かに上昇しています。

 下士卒の男性の離婚率は海兵隊と空軍で若干増加していますが、海軍と陸軍では一定です。下士卒の女性のみ離婚率は、7.8%のまま変化しない海軍以外では増加しています。陸軍では下士卒の女性の離婚率は、下士卒の男性の離婚率の3倍です。

 国防総省による離婚率は、予備役と州軍や除隊後の離婚を含みません。2009年のアメリカの民間人の離婚率は3.4%です。


 この記事は読んでいる途中から国防総省の勇み足だと思い、笑ってしまいました。福利厚生を担当する部署が、自分たちの功績を言いたくて仕方がないという感じです。気持ちは分かりますが、まだ今年は完全に終わっていません。横ばいの数字が、これから上昇する可能性もあるのです。

 さらに気になるのは、女性の陸軍兵士の離婚率です。民間と比較しても2倍以上である理由を調査すべきです。陸軍と海兵隊のように地上戦を担当する兵士にストレスが集中するのは言うまでもありません。男性の陸軍兵士の離婚率は低いのに、女性だけが多い理由は是非とも知りたいと思います。

 さらに、除隊してからの離婚率も気になるところです。PTSDの影響は期間を経てから出る場合もあり、PTSDは離婚の主因の一つです。これは軍隊ではなく、民間研究機関の出番かも知れませんが、在籍中の離婚を考えるためには、除隊後における研究が関係してくる可能性もあります。

 米軍の離婚問題は過去に何度も取り上げています。「米軍」「離婚」というキーワードで、当サイトを検索してみてください。



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