拷問承認の調査に共和党議員が同調

2010.11.13

 military.comによれば、共和党のジェイソン・チャフェツ上院議員(Rep. Jason Chaffetz)は、ジョージ・ブッシュ大統領(President George W. Bush)がテロ容疑者の拷問に関与した件の調査を支持すると言いました。民主党が前大統領の悪行の調査を要請するなら、チャフェツ上院議員は賛成します。

 「私はブッシュ政権を追求するのを恐れません。私は権力層によってここ(議会)に送られたのではありません」「2008年に私が議会に立候補した時、ブッシュは私に対抗する選挙活動をしました。だから、私は戻って、彼らを見守る気はありません」と、政府監視及び司法委員会(the Government Oversight and Judiciary committees)を務めた2期目のチャフェツ上院議員は、9日にMSNBCのダイアン・ラティガン(Dylan Ratigan)のインタビューで言いました。(ニュース映像はこちら


 残りは省略します。

 ブッシュが回想録「Decision Points」を出版し、本の中で拷問を承認したことを認めたことから、米議会に調査を行うべきとの声があがっているのです。チャフェツ上院議員の主張は私憤なのが気になりますが、今後、こういう動きが議会内に広がる可能性を示唆します。

 アメリカはジュネーブ条約(国際人道法)に加盟しています。この条約は加盟国の正規軍が守るべき規則を定めています。条約ができた時にはCIAは存在しませんでしたし、国家情報機関まで対象にする必要は意識されていませんでした。だこら、CIAが拷問をしても、アメリカの国内法では裁けないのです。これは著しい矛盾です。

 これを解決するには、ジュネーブ条約を改正し、国家情報機関にも正規軍と同じ義務を課すことです。しかし、それは加盟国の離脱を促すかも知れません。

 ジュネーブ条約は人類の大きな進歩であり、恒久的平和の第一歩でした。国際赤十字社は、その後のNGOの誕生を促し、国際協力の重要性を認識させました。

 しかし、この進歩を理解しないとか、知らない政治家が権力の座につくと、いとも簡単に進歩は後退するのです。

 ブッシュ前大統領が本に、ジュネーブ条約の歴史と意義を認識した上で、それでも拷問が必要だったと書いているとは思えません。知っているなら、在任中に言ったはずです。読んではいないものの、ブッシュの本には「本土が攻撃を受けたのだ、敵に対して甘い手を打てば負けるだけだ。厳しい決断が必要な時だったのだ」といった、自分の決断を正当化することしか書いていないと予想します。

 国際法に関心がある人なら、ブッシュの決断に強い怒りを感じているはずです。CIAに拷問を認め、グアンタナモベイ収容所を認めて、どうしてナチスドイツの秘密警察(ゲシュタポ)を批判できるでしょうか?。「アメリカ人はいまごろ、ヒトラーの気持ちが分かったのかね」と皮肉りたくなります。

 日本人も戦地で憲兵隊に現地人を拷問させた歴史を持ちます。それが、ブッシュ政権と一緒に行動する道を選んだのです。小泉政権時、こういう懸念は、まず聞かれませんでした。

 人は目の前に脅威が出現すると、理性が短絡してしまう、とは私の時論です。私は当時から、声高にアメリカ支持を叫ぶ人は、テロを目の前にして怖いのだと考えていました。尖閣諸島沖に現れたのが漁船ではなく、中国軍の戦闘艦だったら、こういう人たちはパニックになるのかも知れません。そして、何かしなければと考え、在日中国人を襲撃するかも知れません。

 我々に必要なのは、戦争を客観的に観察し、合理的な手段を講じていくことだけです。戦争を一歩引いて眺める余裕と、そのための知識が必要です。



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