統合末端攻撃統制官を増強へ

2010.10.6

 military.comによれば、統合末端攻撃統制官(joint terminal attack controller: JTAC)の大幅な不足に直面し、空軍は同盟国から、より多くを訓練する努力を増加しています。その大半は、アフガニスタンでNATO軍の空爆を要請するために派遣されるとみられます。

 JTACは、敵目標に空爆を要請する訓練を受けた空軍兵です。普通、陸軍の地上部隊に配属され、部隊が攻撃を受けたら、適正な爆弾を選び、パイロットを目標に誘導するのを支援します。JTACは、アフガンで民間人の犠牲を減らすのに特に重要で、陸軍指揮官は戦いを転換する鍵だと言います。約28のNATO諸国がアフガン戦に貢献していますが、約14の非NATO軍もいます。それらの多くは、かつてJTACの能力を持ったことがありません。

 アフガンでの空爆かその他の武力行使かに関わらず、民間人の死者へのアメリカの懸念には根拠があります。8月3日に「ニュー・アメリカ財団(the New America Foundation)」が発表した研究は、タリバンやその他の武装勢力の地域では、民間人2人の死が、典型的に6件の報復攻撃を生んでいることを見出しました。

 昨年、デビッド・ペトラエス大将(Gen. David Petraeus)は、陸軍と空軍の参謀長へ送った覚え書きで、JTACがより必要だと強調しました。ペトラエス大将は、通常、小隊規模の治安チームと特殊部隊に所属するJTACが、大幅に不足していると言います。この不足は、通常、75〜200人で構成される中隊にJTAC一人という陸軍の要請によって促進されています。「各中隊にJTACを持つと、全体で、かつて近づいたこともない大勢のJTACになります」と、ドイツのアインジードラーホーフ(Einsiedlerhof)にある米空軍航空地上作戦学校(USAFE Air Ground Operations School)のJTAC課程の教官、ジョン・チャンゴ大尉(Capt. Jon Chango)は言います。

 現在、現役の空軍JTACの名簿は約526人に達します。この数字は常に変動し、州空軍、空軍特殊部隊のJTAC要員は含みません。計画は4年間で1,036人を超えることを目指しています。空軍はJTACをネバダ州のネリス空軍基地(Nellis Air Force Base)とドイツの2つの学校で訓練しています。在欧米空軍(USAFE)指揮官ロジャー・ブラディ大将(Gen. Roger Brady)は、ヨーロッパの学校に、訓練能力を年あたり72人から144人に倍増するよう指示しました。学校指揮官アル・ロバート中佐(Lt. Col. Al Roberts)は、それらの生徒の少なくとも50%はアメリカ外から来ると予測されると言います。最近5週間に卒業したクラスの14人では、米空軍は3人だけで、他はルーマニア、ラトビア、エスタニア、ベルギー、ノルウェー、スロベニア、クロアチア、ポーランドから来ました。ヨーロッパでの統制官の訓練拡大は直ちにアメリカ人のJTACを増やさず、アフガンで働く他国の統制官の増加を導きます。

 このあと、言語の壁を克服する話や、基本的には自国の軍隊のために活動するJTACは、必要に応じて他国の軍隊のためにも活動するといったことが書かれていますが、省略します。


 陸軍の部隊は、榴弾砲などを持つ砲兵隊には直接連絡しますし、迫撃砲は歩兵部隊に装備されています。どちらも照準方法は同じなので、運用に支障はないわけです。

 しかし、航空機を使う空爆では、航空機のことを知っている者や、事故があった場合の責任分担が必要です。陸軍の中に、そういう者を養成か、空軍から派遣してもらうかという問題は、後者の方法で解決されているわけです。

 ペトラエス大将が言う「通常、小隊規模の治安チームと特殊部隊に所属するJTAC」は、アフガン戦特有のことだと思われます。普通、JTACは大隊程度の規模の部隊に配属されるはずです。小隊規模の治安チームは、少人数で村を巡回したりする部隊で、武装勢力の待ち伏せを受けたときに空軍機を呼ぶのに随行するのだと考えられます。これは、すべての小隊にJTACがいるという意味ではなく、そうした任務を行う部隊に派遣できるJTACがいないという意味でしょう。

 中隊や小隊規模でJTACが必要になっていることには、対テロ戦の特長を見ます。大部隊が動く正規戦でなく、小部隊が個別に動き、決戦ではなく、待ち伏せが中心なので、JTACが各部隊で必要になってくるわけです。「大規模な治安作戦では、正規軍相手の戦いよりも多くのJTACが必要になる」といえます。

 しかし、JTAC増員の努力が最近始まったのなら、あまりにも対処が遅いとしか言えません。民間人の誤爆は2001年にアフガンの空爆を始めた直後から起きていました。私はそういう記事を何度読んだか分からないほどです。

 欧米の軍事技術は世界をリードしてきましたが、この戦争を戦い抜く方法では迷いがあるようです。

 military.comによれば、最近話題になっているパキスタン領内の空爆に関して、パキスタン当局は火曜日に、ドイツ人武装勢力8人が国境地帯でミサイル攻撃により死亡したと言いました。当初の5人死亡から3人増えた形です。



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