ICBM50基が故障でシャットダウン

2010.10.28

 military.comによれば、土曜日に機材の故障が50基の核ミサイルとコントロールセンターのコミュニケーションを中断させました。しかし、空軍はミサイルを発射する能力を失うことはありませんでした。

 事件はワイオミング州のウォーレン空軍基地(Warren Air Force Base・kmzファイルはこちら)で起こり、1時間を越えない間続きました。ホワイトハウスは火曜日の朝に故障について発表しました。違反行為の証拠はありません。

 大陸間弾道弾「ミニットマンIII(The Minuteman III)」は、150基のICBMが配置される第319ミサイル隊の一部です。故障はそれらの50基、米軍が貯蔵するミサイルの9分の1に影響しました。機材故障の間も影響を受けたミサイルの安全を監視することができました。発射管制センターのコンピュータは地下ケーブルを通じてコミュニケーションを行いますが、ケーブルが原因かは確認されていません。基地の要員は50基のミサイル発射場を疑いましたが、損傷の証拠は見つかりませんでした。匿名を希望する軍当局者は、発射管制センターの機材は以前に原因を特定できないコミュニケーションの問題を起こしたことがありました。ホワイトハウスは国防総省に回答を要請しています。

 故障は最初に雑誌「The Atlantic」のウェブサイトで報じられました(記事はこちら)。

 それによると、土曜日の朝、ICBMの部隊は突然、掩蔽壕の中のミサイルがミサイルそのものとコミュニケーションできない「LF Down」という状況に陥りました。「LF Down」は、ミサイルの発射システムに組み込まれている、侵入警報と弾頭分離警報のような、沢山の安全プロトコルがオフラインであることも意味します。「LF Down」では、ミサイルは依然として技術的に発射可能ですが、主に原子力潜水艦との通信に使われるボーイングE-6やE-4B、TACAMOのような空中指揮統制所からコントロールできるだけです。国家が高い核攻撃の警報下に置かれると、核攻撃のコードの送達の周波数が異なるシステムをつなげているので、これらの装備は自動的に活動します。

 技術者たちは、通常は10基、最低でも5基のミサイルの一組を担当する発射管制センターのコンピュータ(LCC)がシーケンス外警報を発し、システムを通して騒音の波をもたらしたと考えています。LCCは核ミサイルを順番に調べ、これを予期しないときにミサイルの中の受信機が認識し、エラーコードを送信すると、信号を発し始めます。

 LCCが時々、シーケンス外警報を鳴らすので、ミサイル技術者たちは緊急の修復を試みました。しかし、次々とミサイルがエラー状態を示したので、彼らは調子の悪いセンターがつながっている5基のLCC全部をオフラインにする決断をしました。50基のミサイルとの通信が切られました。ミサイル技術者たちは、それからLCCの1つを再起動し、それは正常にミサイルの送受信機を調べ始めました。別の3基のLCCは起動に成功しました。疑わしいLCCはオフラインのままです。

 空軍基地の指揮官は国内の他の2ヶ所の核ミサイル指揮センターの仲間へと、同時にワシントンの国家軍事指揮センター(the National Military Command Center)に警告を送りました。この時点で、彼らは故障の原因は分からず、他のミサイルシステムが類似する兆候を経験しているかは分かりませんでした。

 12年前、ノースダコタ州のマイノット空軍基地(Minot AFB・kmzファイルはこちら)とモンタナ州のマルムストロム空軍基地(Malmstrom AFB・kmzファイルはこちら)で類似したハードウェアの故障が置き、原因はハードウェアだと疑われました。

 事件の報告を受けた軍当局者は「これほどのことを経験したことはありません」と言いました。時々、1基か2基が止まることはあり、いくつかの弾頭は定期的に保守のために休止されると言いました。究極的に「我々は5〜6基、あるいは7基を同時に処理できるでしょうが、50基のICBMの指揮統制と機能を失ったことはありません」。


 機材の故障となると、本当に技術情報を詳細に知らないと判断のしようがありません。どんなに深刻な核事故や誤発射が起きても、我々は専門家のよく分からない説明を後で聞かされるだけというのが、核戦略の特徴です。

 記事には過去の事故の例も載っています。また、当サイトにもそれらが紹介されているので、記事中の基地名でサイト内検索を行えば、いくつかの記事を読めます。

 記事から理解できる範囲では、事故はツリー上のネットワークを通じて広がったということです。地下ケーブルが本当に問題なのかは分かりませんが、とにかくどこかで異常な信号が生まれ、それが1台のLCCに警報を出させました。なぜか異常は他のLCCでも起こり、それは5台のLCCに拡大しました。それらをシャットダウンして、再起動したら直ったというわけです。考えやすいのは、異常はセンターに近い部分で起こり、実際には異常が起きていなかったということです。しかし、もっと見えにくい問題がミサイルに近い部分にある可能性もあります。システムが複雑になるほど、問題の検知はむずかしくなります。特に、過去にも類似する問題が起きているのなら、間違いなく、重大な問題が隠れており、修復されていないのです。それも、別の基地で起きているのなら、システム内に問題がある可能性が高まります。

 今回問題を起こしたのは、コンピュータが間違ったコマンドを送信した時に検知するためのシステムです。こういうエラーを検知するシステムは、それ自体が故障すると、本当に故障なのかどうかが分からなくなり、かえってやっかいです。コンピュータは普通は仕事を間違えたりしません。しかし、実例はいくつもあります。ロケット事故の実例で、打ち上げ直後にロケット内で極めて短時間の停電が起こり、コンピュータが再起動した際に誤った指令を出したためにロケットの軌道が逸れ、自爆処理した事例があります。2009年のテポドン2号の打ち上げの際にも、陸上自衛隊が間違った電子メールを送信したことがありましたが、この原因は操作できなくなったコンピュータを強制終了したためと発表されています。



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