GAOがアメリカの海賊対処を批判

2010.10.12

 military.comによれば、米政府説明責任局(Government Accountability Office: GAO)は、ソマリアの海賊対処に関して、政府の方策が効率的ではないと批判しました。

 国家安全保障会議のアフリカの角沖の対海賊アクションプランを評価した報告書は、いくつかの米当局がよりよく活動を調整し、2008年以降更新されていない戦略を修正することを勧告しました。

 「パフォーマンスと海賊の動的性質を検討する米政府の計画と努力を更新することなく、米国政府は最大の国家利益の地域に目標を絞った努力と資源を確実にする能力において限定されています」とGAOは報告しました。GAOによれば、米および国際当局は、ソマリアのビジネスマンと国際的なネットワークは資金と情報を、身代金支払いの分け前と交換に、海賊組織に提供しているとも疑っています。しかし、漢族への資金を追跡・差し止めする米国の努力は、ソマリア国内の政府と銀行の不足から来る情報のギャップにより制限されています。

 2007年以降、ソマリア沖の海賊行為は着実に成長し、国際社会は多数の戦闘艦を配備しました。ヨーロッパ連合、NATO軍、統合海上部隊(Joint Maritime Forces)、第151合同任務部隊(Combined Task Force 151)が毎年33,000 隻の船が通る輸送ルート上で役割を果たしています。しかし、海賊は攻撃を増加させ、活動海域もインド洋へ広げ、より多くの身代金を船会社から受け取りました。

 しかし、若干の改善がありました。海賊の攻撃は2007年の30件から2009年の218件へ増える一方で、実際にハイジャックされた攻撃の割合は2008年の40%から昨年の22%へ下がりました。2010の最初の半年間、2009年の同時期よりも49件少ない約1400件に下がりました。

 「防衛当局からの分析的な予想は、海賊行為の影響を受ける海域を完全にカバーする、1,000隻以上のヘリコプターを搭載した艦船を必要とするでしょう。これは世界の海軍が提供するものを越えています。「現在の資源では、統合海軍部隊の当局者は、ある特定の時に、アフリカの角で対海賊のパトロールを行う国際艦船は25〜30隻と見積もります」。

 地上の海賊の隠れ家を狙う計画はないことも指摘されました。「国家と防衛の当局者は、陸上で海賊の既知を破壊・解体するステップが取られなかったのは、一部には大統領がこの行動を承認しなかったこと、アメリカがこの地域で資源争いという他の興味を持っていること、治安に関する長期間の懸念が米軍と政府当局がソマリアに存在することを邪魔していることがあります。

 以下はGAOの勧告の要旨です。

  • 米国の角沖の進化する状況とプライオリティと計画への効果に、よりよく対処するよう行動計画を修正する。
  • 米国の対海賊活動の効果を測り、評価する方法を特定する。
  • 作戦、支援、人員の費用を含めて、米国の対海賊活動のコストを特定する。
  • 機関の役割と責任を明確にし、組織間の情報共有のメカニズムを開発する。
  • 国防総省のGAO報告書への対応は、組織間の調整不足に関する懸念に取り組んでおらず、それらの組織が海賊と戦うための新しい計画を発案するのに失敗している。

 私もソマリアの海賊への対処は疑問を感じていました。それは主に、各国の連携がどのように取られているのか、活動全体の計画を誰が立て、評価しているのかが不明であることから来ています。単に、パトロールを繰り返しているだけなら、それは意味の薄い活動にしかなりません。海賊の実態を明らかにして、軍事的、政治的な手法で、彼らを解体する方向に持っていくべきです。目先は違うものの、活動の連携が取れていない点は、やはり問題点としてあげられるべきと考えます。

 GAOは政治的な理由で、地上で海賊を掃討する方法が取られていないと結論しているようですが、過去には、紛争が泥沼化することを恐れる声があがっていました(過去の記事はこちら)。しかし、特定のテロ容疑者を殺すためには、地上部隊が降下して、標的を暗殺する事件は数回起きています。いずれも真相は明かされていませんが、米軍特殊部隊がやったとみられています。私も地上で海賊を攻撃するのは、よほど明確に一般人との分離が図られる場合を除いて、避けるべきだと考えます。

 日本も対海賊活動に参加しているものの、船を出すことで満足してしまい、その効果までは考えようとしません。湾岸戦争時に、クウェートが、祖国解放に対する感謝を示すために出した新聞広告から、日本が外されていたことに対する不満が、未だに尾をひいているのです。以降、国際紛争があると、すぐにこの話が引き合いに出され、国際貢献を叫ぶ人たちが現れるようになりました。単なる手違いで載らなかっただけであり、ちょっと我慢すれば済む話を、自衛隊の派遣にまで話を広げるのは、明らかに冷静な軍事的考察を欠いており、単なる感情論に過ぎません。しかし、このパワーはイラク侵攻に自衛隊を派遣するまでに発展しました。いまでも、海賊対策の効果を日本政府が慎重に分析し、結果を公表したことはありません。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.