北朝鮮軍事パレードのミサイル

2010.10.11

 北朝鮮の朝鮮労働党の創立65周年を記念する軍事パレードに、日本の全域を射程におさめる新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられる兵器が登場したと、各メディアが一斉に報じています。

 NNNによれば、ムスダンは射程が3,000km以上、日本全域とアメリカ軍の基地があるグアムが射程に入るとされます。


 ムスダンとされるミサイルは、以前からノドンBと呼ばれていたミサイルのことだと思われます。開発が発覚したのは2003年で、ロシアから1992〜1998年に潜水艦から発射するSS-N-6に関する技術を得たとみられています。GlobalSecurityの解説では、アメリカのコード名は不明とされていますが、現在はムスダンと命名されているのかも知れません。韓国政府は正式にノドンBと呼んでいます。他に最初に確認された空軍基地の名前をとって「ミリム(Mirim)」と呼ばれることもあります。

 ノドンBは、韓国国防相チョ・ヨンキルは2004年7月7日、北朝鮮がこのミサイルを配備し、射程は1,860〜2,500マイルだと述べました。 2007年にはノドンBを移動式発射装置に搭載して配備したことが確認されました。

 ノドンBはテポドン2の1段機体にも4基搭載されています。よって、このミサイルはまったく「新型」とは言えません。北朝鮮の弾道ミサイルが報じられると、常に「新型」と呼ばれる言葉が使われるので、北朝鮮では様々なミサイルが作られ続けているように思われますが、実際には彼らのミサイルは限られています。国の経済力はミサイル開発を支えられず、イランとの技術協力でなんとかつないでいる状況です。そのため、北朝鮮は自国で発射試験をしなくて済んでいます。そのために開発状況が分かりにくくなっているという問題はあります。

 ノドンBは貨物コンテナに収まります。アメリカは北朝鮮が貨物船に、このミサイルを乗せて、公海上からアメリカに向けて発射することを危惧しています(関連記事はこちら)。北朝鮮にはミサイル潜水艦を造る技術はありません。しかし、こういう安価な方法で簡単に射程を伸ばせます。記事にあるように、グアムだけが問題なのではありません。

 今回、アメリカを含む海外のメディアに取材を許可したのは、金正恩(ジョンウン)を後継者として内外に示すためです。目新しいのはミサイルではなく、こちらの方です。


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