パキスタンが北部補給路を閉鎖

2010.10.1

 military.comによれば、NATO軍によるパキスタン領域内での空爆に抗議するため、パキスタンはアフガニスタンへの補給路を閉鎖しました。

 パキスタン内務大臣レーマン・マリク(Interior Minister Rehman Malik)は空爆について、道路封鎖には触れないまま「我々は我々が同盟か敵かを見定めるでしょう」と言いました。NATO軍は、連合軍の航空機が誤ってパキスタン軍を攻撃したというパキスタンの報告書を調査しています。連合軍には、国境付近に配置されたパキスタン軍を誤って殺害したと認める少なくとも1件の事件があります。

 匿名のパキスタン治安当局は、木曜日の空襲がアッパー・クラム地域(Upper Kurram region)の検問に対して行われたと言います。死亡した男は国境を守る準軍事組織の者だと、治安当局者は言います。遺体は地域最大の都市パラチナール(Parachinar)に運ばれました。負傷した兵もいます。数時間後に、最初の空爆から9マイル(15km)離れたところで、もう一つのNATO軍によるヘリコプターのロケット攻撃が報告されました。負傷者は出ませんでした。パキスタンとアフガンとの国境線には目印がなく、パキスタン人の服装は、長いシャツとタブタブのズボンで、民間人と武装勢力との区別をつけにくくしています。

 NATO軍の情報・特殊作戦に関する広報官ジョン・ドリアン中佐(Lt. Col. John Dorrian)は、連合軍は木曜日早くに、彼らがアッパー・クラム州に隣接するパクティア州(Paktia)のダンド・ワ・パタン地区(Dand Wa Patan district)にある連合軍基地に対して迫撃砲を発射している武装勢力と信じるものを観測したと言います。「連合軍の航空兵器チームが支援攻撃を要請し、武装勢力と交戦しました」「航空兵器チームはパキスタンの空域に入らず、武装勢力は国境のアフガン側にいると考えられると報告しました。ドリアン中佐は、パキスタン軍当局者がNATO軍にパキスタン軍の兵士が連合軍の航空機に攻撃されたことを知らせました。事件の数時間後、パキスタン当局は、カイバル部族地域(the Khyber tribal region)の端にある、NATO軍の資材の入り口であるトルカム(Torkham)国境検問所で、アフガンに向かうNATO軍の補給トラックを止めるように命じました。理由は示されませんでしたが、今週初めに、パキスタンは連合軍のヘリコプターが再びパキスタン国内を攻撃したら、NATO軍の輸送部隊を保護するのを止めると警告しました。パキスタン南東部のアフガンへの補給路は閉鎖する命令を受けませんでした。非致死性の補給品の約80%は、パキスタンのカラチに陸揚げされたあとでパキスタン領内を輸送されます。代替の輸送ルートもありますが、パキスタンのは最も安価で便利です。


 北部の補給路は最も重要なルートです。そこを閉鎖することで、パキスタンはアメリカに圧力をかけているのです。しかし、南部のルートはそのままなので、この閉鎖は一時的なものになるでしょう。

 去年も北部ルートがしばらく使えなくなる事態が起こりました(過去の記事はこちら)。タリバンが北部ルートを激しく攻撃し、アメリカはキルギスタンなど中央アジアの国に空輸ルートを隔離することになりました。その準備が整うまで、一時的に生活用品が不足したのです。武器弾薬類の不足も起きたかも知れませんが、公表されることはないでしょう。

 いずれにしても、来年には撤退を開始します。それまで補給路が何とか持てばよいのです。パキスタンはアメリカの資金援助が欲しいのですから、文句を言いながらも協力を続けるでしょう。



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