普天間基地問題に怒るアメリカ人

2010.1.5


 military.comが鳩山総理の年頭記者会見について「日本が米とさらなる対等関係を要望」と報じました。

 記事は事実関係をほとんどそのまま報じているだけですが、面白いのは記事に対してつけられた読者のコメントです。このサイトの読者の大半は米軍人ですから、これで彼らの意識を知ることができるのです。

 たとえば、次のコメント。書いたのは、テリー・パギー元海兵隊三等軍曹(E-5)です。(プロフィールはこちら

1stMarDiv75
Jan 4, 2010 5:15:59 AM
バターンの死の行軍でアメリカとフィリピンの兵士を殺害したことを認めたらどうなんだ? でなきゃ、彼らは南京で何をした? それが出発点だろう。

 情けないことに、発言のほとんどが、この類です。他にもいくつかあげてみます。

 元陸軍三等軍曹(E-5)のグレン・ヒューストンはアフマディネジャド大統領並みの過激な発言をしています。(プロフィールはこちら

GlenCHouston
Jan 4, 2010 6:20:52 AM
地図上から日本を吹き飛ばしてしまうのはどうだ?

 ちょっとは教育があるはずの元海兵隊大尉(O-3)のブルース・スミスですら…(プロフィールはこちら


TrakRat78
Jan 4, 2010 5:31:43 AM
我々は厳密に日本人が望むものを与え、我が軍と彼らの金すべてを日本の領域から除去するべきだと、私は思う。「おや、大変すみません。でも、我々はあなたの領域に基地を置けないのですから、我々はもうあなたたちを守れません。「対等」であることの一端は、あいにくと自国を守るために金を払うことが必要です。お国の環境政策の予算と支出のバランスに幸運を。では、また」。

 軍人ではないらしいアレックス・アートメンコはちょっとは理性的なのですが…(プロフィールはこちら

aartamen
Jan 4, 2010 6:10:05 AM
現時点で、我々は日本人が我々の保護を必要とするよりも多くの基地を持っています。彼らは適切な規模の海軍と空軍を持っています。近い将来、誰が彼らを攻撃しようとするでしょうか?。ロシアは過去となり、日本を攻撃する理由なんてありません。極東において日本は名目上のものだけども、中国は「西欧」とのいかなる戦いからも利益を得ません、そして狂える北朝鮮に対して誰がミサイル防衛基地を配置しようと問題ではありません。
そこで、私はゴジラに関してなされることなら何でも疑います。
どうか「change」の首相が「change」の大統領をハグし、彼らが話し合って、もっと無駄な話を放ちますように。これは希望的観測です。

 大体、military.comのコメント欄はどうしようもない発言が多いのですが、中には筋の通った意見もみられます。そこには常識を重視する姿勢が見えます。ですが、戦争のような問題は日常的な常識だけで判断できない部分が少なくありません。

 一番目のパギーさんの発言には、いくつかの点で問題があります。バターンで起きた連合軍捕虜の大量死は事実ですし、この悲劇の原因は完全に日本軍にあります。ですが、南京事件とは違い、バターン事件は歴史的事実として日本で完全に認められていることなので、事実を認めろと叫ぶパギーさんの要望には意味がありません。また、初期のアメリカがネイティブ・アメリカンを全滅寸前まで追い詰めた罪を認めろと日本人がアメリカ人に要求した場合、アメリカ人はそれを受け入れて、「出発点」をすることに同意するかという問題もあります。早い話、パギーさんの意見は言い掛かりということになります。彼らは沖縄県民の我慢が限界に達するまでの経緯など、何も分かってはいないのです。

 保守の論客たちは、国同士の約束を守るべきだと主張しますが、相手であるアメリカ人の平均的な意見はここにあげた程度ということを知るべきです。私はそのレベルでこの問題を考えるべきではないと思います。

 前にも書きましたが、オバマ大統領、クリントン国務長官、ゲーツ国防長官のいずれも、国防総省と国務省の説明に基づいて行動しています。彼らも普天間基地については軍人と官僚のブリーフィングを信じるしかないのです。長年に渡って軍人と官僚が積み上げてきた複雑なプロセスを、ボスが頭ごなしに却下できないのは当然です。この三者だけが集まるとき、国防総省と国務省の官僚とのミーティングとは、まったく別の話がなされるのです。つまり、さきほどの軍人のランチタイムの雑談程度のレベルではなく、もっと政治レベルの話し合いが行われるわけです。そこでは、ブリーフィングの内容が事実と違っている可能性も検討されるでしょう。

 そこで日本人が行うべき行動は、ホワイトハウスや米民主党へ直接意見を届けることです。率直に、物事を誇張せず、彼らも注目していない問題を教えていくことです。日米関係が新しくなるとすれば、こうした日本人からアメリカへの情報発進が民間レベルで自発的に行われることが望ましいと、私は考えます。鳩山政権がこの問題で新しい日米関係へ入ったように、国民同士のレベルでも新しい関係に入るべきだと考えます。


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