米軍が同性愛差別撤廃へ向けて出発

2010.1.31

 今日は日曜日ですが特別に更新します。military.comによれば、米国防総省は、数年越しとなる同性愛者が公然と軍務につけない制約を解くため、来週から活動を開始します。

 ロバート・ゲーツ国防長官(Defense Secretary Robert Gates)と統合参謀本部議長のマイク・マレン海軍大将(Adm. Mike Mullen)は、どうやって兵士の士気や態度を傷つけずに禁止を解くかに関する特別調査を火曜日に発表します。この調査が完了するのに、今年の大半が必要です。オバマ政権は、禁止の撤回はどんなものであれ、議会からスタートし、軍の最高指揮官の支持を得るべきだと考えています。禁止撤廃は、軍の指揮系統と部隊間の信頼の核心を突く、感情的な問題を引き起こします。米軍兵士と指揮官は、同性愛者を公然と受け入れるでしょうか?。彼らがそうしないなら、国防総省はなにをすべきですか?。1993年に、この差別を撤廃しようとしたビル・クリントン大統領(President Bill Clinton)は「聞かない、言わない政策("don't ask, don't tell" policy)」を制定しました。クリントン大統領は完全な撤廃を望みましたが、そうすることが議会と軍は秩序を脅かすと言いました。この政策の下では、米軍は入隊者に性的な傾向を質問してはならず、隊員は自分が同性愛者またはバイセクシャルであるか、同性愛者の社会運動に参加しているか、同性の隊員と結婚すると言ってはなりません。1997~2008年、米軍は方針に反した10,500人以上の同性愛者を除隊させました。

 いよいよ米軍が同性愛差別の撤廃に向けて動き出します。今年1月中に具体的な動きが出るとは、昨年から言われていたことなので、大体スケジュール通りの動きです。記事の後半に、調査内容は「同性愛者だと公言している者と同室になることを兵士に強制できるか」や「同性結婚や軍人の(同性の)配偶者への給付金がいくらかかるか、同性愛者の昇進に定数を設けるべきか」などを調査するとし、2つの戦争で軍が酷使されているとき、一部の高級将校が変化を受け入れるのを嫌うとか、民主党はこの秋の中間選挙までは問題を後押ししそうにないという障害があげられています。そこで、問題の解決に時間をかけることになるわけですが、今年中に報告書が出るのなら、来年末までにはかなりの部分まで進展している可能性が高いように、私は予測します。

 この変化によって、米軍内部にどのような変化が生まれるのかが、私は気になっています。米軍の文化がより穏健な方向へ行くのか、何の変化も生まないのか。たとえば、世界には男性と女性しかいないと考えるキリスト教は、米軍の思想的基盤となってきましたが、それにどんな変化が生じるのかといった問題があります。米軍の統一軍規法典の中で、同性愛者によるアナルセックスの罪名は「Sodomy」ですが、これは旧約聖書の創世記に登場する都市の名前「Sodom(ソドム)」が語源です。ソドムは堕落したために神によって滅ぼされたことになっていて、堕落の中心は同性愛だったとされています。同性愛者は死刑という米軍の規則は旧約聖書に基づいていると考えられます。同性愛を放置すると世界が滅ぶという恐怖が、実は差別を生んでいるのです。同性結婚を許可するのなら、この罪は撤廃されることになります。また、こうした信条の基盤が崩れることで、むしろ他宗教に対して米軍が寛容になる可能性もあるといえるのです。私はこうした変化を歓迎します。


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