新千歳空港が中ロ旅客機の乗入制限を緩和

2010.1.22

 最近、あるテレビ局の報道記者から取材を受けました。3月から北海道の新千歳空港が中国とロシアの航空機の乗り入れが緩和されるのですが、これまで規制があったのはなぜかという質問でした。

 これまで両国の航空機が乗り入れられるのは、航空自衛隊の訓練がない土曜日と日曜日、平日は水曜の日中と金曜の午後5時以降だけに限られてきました。しかし、増加する中国人観光客の受け入れを増やすため、火曜日の一部の時間帯にも認めることになったのです。防衛省は、機密保持の観点から、冷戦時代から続けてきたことだと説明しているようですが、防衛省が具体的になにを隠そうとしているのか、などを記者はお尋ねでした。

 これが機密を守るためとすれば、訓練を見られたくないことくらいしか考えられません。緊急発進の様子などを秘密にしておきたいのでしょうが、それで航空機の乗り入れを制限するのは不合理です。確かに、かつては千歳空港は官民共用で、同じ滑走路を使っていました。旅客機が着陸したときに千歳基地の施設がよく見えたでしょう。しかし、偵察のために必要な情報をタキシングする旅客機の中から集められるとは思えません。撮影するのなら、空港ターミナルの展望デッキに出て、望遠レンズを千歳基地に向けるしかないわけですが、これは冷戦中にはひどく目立つ行為といえます。それよりは、スパイを千歳市内に滞在させて、高いビルなどから、じっくりと調査した方が効果的です。金を払って、調査を日本人に依頼するという手もあるでしょう。だから、訓練がある日に航空機の乗り入れを禁止しても、こうしたスパイ行為は防ぎようがないのです。

 それに、現在のように簡単に航空写真が手に入る時代には、緊急発進にかかる時間を調べるのも簡単です。緊急用ハンガーから滑走路の出発地点までの距離と、戦闘機が地上滑走する速度が分かれば、大体のところは推測できます。また、この時間が分かったからといって、中ロが特別に有利になるということもありません。

 記者は、航空自衛隊は、格納庫の壁の厚さを知られないために、中ロ航空機の着陸時に格納庫の扉を閉めている、という話を聞いたと言いました。これも疑問を差し挟む余地のある話です。地上の格納庫は雨風を凌ぐための設備で、特に防弾、防爆の機能はありません。小銃弾でも穴が空くほどの耐久性しかないのです。これが地下の掩蔽壕であって、航空機が地下何メートルに隠されているのかを知られたくないというのなら、話は別です。こんなことは中国やロシアの空軍関係者なら知っているはずです。それに、格納庫の扉を閉めるのは、かつて戦艦大和を建造した時、近くを走る列車の窓を塞いで、その巨大な船体が見えないようにしたという話を連想させ、それはちょっとしたこともスパイと結びつけられた時代のようだ、と私は言いました。いまでも、こんな制限があること自体が私には理解できません。これはむしろ、日本の防衛ではなく、防衛省・自衛隊の組織防衛というべきではないかとも思います。中ロの脅威性を残しておくための材料として、この制限を手放さないのが防衛省・自衛隊にとって利益になるという計算があると考えられるのです。

 防衛省・自衛隊は、この種の緩和できる規制事項について、むしろ積極的に再調査し、緩和できるものを緩和するくらいの 先進性を示すべきです。よく分からない日本への脅威に対して、よく分からない理屈を展開して防衛予算をつけてもらう時代は既に終わっています。

 なお、20日に紹介したトリジコン社のスコープに聖書の銘が刻まれている問題で、ニュージーランド軍が、すべての銘を削除すると発表したことをmilitary.comが報じています。同軍の広報官によると、トリジコン社はこれから注文されるスコープから銘を削除するよう命じられ、既に使用しているスコープからも削除されるだろうとのことです。

 本日は興味深い記事があるので、あとでさらに更新を行いたいと考えています。


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