NATOがロシアにミサイル防衛連携を示唆

2009.9.19



 昨日、オバマ大統領が東ヨーロッパへの迎撃ミサイルシステム配備を中止すると発表しましたが、NATOはそれどころか、ロシアとミサイル防衛での連携を示唆していると、military.comが報じました。

 NATOのアンダース・フォー・ラスムッセン事務局長(Secretary-General Anders Fogh Rasmussen)は、アメリカとロシア、NATOは冷戦の憎しみを忘れて、それらのミサイル防衛システムをアジアと中東の新しい潜在的な核の脅威に対してリンクしなければならないと主張しています。ロシアのディミトリー・ロゴジン公使(Dmitry Rogozin)はラスムッセン事務局長の発言について、「非常にポジティブに聞こえる」と評し、「ロシアとの協力は選択肢ではなく、必要性の問題だ」と述べました。ロゴジン公使は、これによってロシアがポーランドのイスカンダルミサイルを配備する必要がなくなったことも示唆しました。2003年以来、NATOとロシアは少なくとも4回の仮想ミサイル防衛演習を行いました。実働演習の計画もありましたが、実現はしませんでした。

 イランと北朝鮮の核兵器に対して、大国同士がスクラムを組もうという話です。これが実現すると、ロシア、アメリカ、NATOの関係は一層複雑になります。アルカイダなどの対テロ問題やソマリアの海賊問題で、これらの3勢力はうわべの協力関係を築いてきました。しかし、ウクライナとグルジアのNATO参加はロシアにとって妥協しがたい問題です。また、グルジアを巡る問題は強力な連携の下で疼き続けるでしょう。ロシアは歴史上、自国が侵略されることに強い警戒感を持ち、一見したところ偏執的なまでに防衛に熱心です。そのあまり、周辺国がNATO側に転じることを許せないのは自然な話です。ミサイル防衛の連携で、極めて強固に発展した関係は、こうした問題が原因で壊れる可能性があります。しかし、これまでの経緯から、そろそろこうした協力関係ができてもよい時期だと、NATOが考えるのは自然であり、問題点を理解しながらも提案することになるのでしょう。ミサイル防衛での連携と言っても、弾道ミサイルの情報を共有するだけで、迎撃自体は各国が行うわけです。たとえば、2006年に北朝鮮がテポドン2号を打ち上げた際、各国がバラバラに探知を行った結果、中国は発射の事実を自国では突き止められなかったとされます。こうしたことが起こらないように、各国が探知した情報を相手国に通告する態勢を作ろうということです。探知技術のレベルを知られないために、詳しい情報までは共有しないでしょう。ミサイルがどの辺を飛行しているかを該当国に通告し、あとは担当する国に丸投げするだけと考えられます。今後、この提案がどう発展するかは分かりませんが、様々な展開があることは間違いないと思われます。


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