国際刑事裁判所がアフガンの戦争犯罪を捜査

2009.9.11



 military.comによれば、国連の国際刑事裁判所(the International Criminal Court)の検察官は、アフガニスタンでのNATOとタリバンの戦争犯罪に関する情報を収集しています。

 ルイス・モレノ・オカンポ検察官(Luis Moreno Ocampo)は、グルジア、コロンビア、ケニア、象牙海岸とガザ地区でのイスラエルによる戦争犯罪も調査しており、今後3年間で4つの新しい調査を始める計画だと述べています。国際刑事裁判所は2002年に活動を開始しました。アフガンはこの裁判所を設立するローマ条約に署名しました。アメリカもクリントン政権期に署名しましたが、ブッシュ政権はこの条約が米兵を浅はかで政治的な動機を持つ訴追するために利用されると主張して、署名を無効にしました。

 ところで、別のmilitary.comの記事によると、アフガンにあるスウェーデンの慈善病院が米兵が強引に病院の捜索を行ったと批判しています。先週、第10山岳師団の兵士はワルダク州(Wardak Province)にある病院を管理者の同意なしに捜索しました。兵士たちは民間人1人を死亡させた輸送隊を狙ったIED攻撃の後、この病院に武装勢力が隠れていると信じて捜索を行いました。この病院を運営するアフガンのスウェーデン委員会は兵士はドア(複数)を壊し、スタッフと来訪者を縛り上げたと主張します。米国防総省は、兵士は病院に行ったが、アフガン警察を同伴し、病院管理者の同意を得て捜索しました。ドアは壊していませんが、誰も鍵を持っていないと告げられた後で(ひとつの)ドアの鍵を壊したと主張しています。結局、タリバン戦士は発見されませんでした。

 従来、戦争犯罪裁判は占領国や戦勝国が行うものでしたが、往々にして不公正な判決が出ることが問題視され、もっと一般の刑事裁判に近い形で行うことが求められてきました。2002年にようやく、そうした試みがスタートしたわけです。スウェーデンの病院捜索事件は情報が不十分とはいえ、現地部隊が真相を隠しているように思われます。スウェーデンのような国は、わざわざ虚偽の情報でアメリカと対立しようとはしないでしょう。こういう場合、米軍による訴追に期待は持てず、第三者の裁きが必要になります。まだ、そのための手法は初期の段階にあり、アメリカのような民主主義の大国が協力すべきですが、そのアメリカが参加していないところが問題です。こうなると、他にやってくれる国はヨーロッパ諸国など、ごく一部に限られてしまうからです。


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