米陸軍がアルコール中毒対策を実施

2009.8.22



 military.comによると、米陸軍はアルコール中毒の治療を周囲に知られることなく受けられるプログラム「機密アルコール治療・教育試験プログラム(The Confidential Alcohol Treatment and Education Pilot program: CATEP)」を、7月からいくつかの軍施設で試験的に実施中です。

 CATEPを受けることを申し出ると、「陸軍中毒物質乱用プログラム(the Army Substance Abuse Program: ASAP)」の治療を受けられます。ジョージ・W・ケイシー・ジュニア陸軍参謀総長(Chief of Staff of the Army George W. Casey Jr.)は、兵士の間にアルコールの常用が広がっているといいます。8年間続いた戦争は、兵士に暴力行為やアルコールの過剰摂取、麻薬中毒、無謀運転などのストレスや不安神経症の増加をみました。CATEPを受けるために、自らがアルコール中毒であることを申し出ても、昇進に影響がないことが保証され、指揮系統に知られることはありません。カウンセリングは勤務外の土曜日と日曜日に行われます。CATEPは2010年2月24日まで続けられます。

 またも兵士のストレスが増加していることを示す話です。先日は、ストレスに対応できているかを評価するテストの話題が出ましたが、今回はアルコール中毒治療の具体策です。7月に始まっていたプログラムがいま報じられたのは、これが順調に進行しているからでしょう。軍人にとって、アルコール中毒は致命的です。アルコール中毒の兵士は重要な仕事を任せてもらえなくなり、当然、昇進も遅れます。特に、酒類は違法ではないため、簡単に過剰摂取でき、苦痛から手軽に逃げるのに使えるところが問題です。アルコールによる影響を受ける肝臓は、最悪の状況になるまで自覚症状を発しません。精々、ときどき夕食時にビールを1本つける程度にしないと、朝から酒を飲みたくなる体質ができあがってしまいます。平素から、苦痛を回避する思考回路を構築したり、自分の意志で安眠できるようにする必要があるのですが、こうしたテクニックは学校では教えてもらえません。一部の者がひどい深酒をするようになるのは避けられません。そこで、こうしたプログラムが必要になるわけです。これは、憂慮すべき統計データが出たことを示していますが、記事には数字は書かれていません。実際に、どの程度の事件が起きているのかが知りたいところです。それは、対テロ戦を考える上でも参考になる数字です。そろそろ、アメリカはこの戦争に耐えられなくなっています。すでに述べているように、アフガニスタンからの撤退はすでに検討が始まっているはずです。しかし、オバマ政権の公約は、イラクから撤退し、主力をアフガンに移してアルカイダを掃討することであるため、まだ撤退の話は公にはできません。オバマ大統領の公約は大統領選挙時のもので、すでに状況はその先へと進んでいます。いずれオバマ政権はこの公約を変更しなければならなくなりますが、まだそれを発表する段階にはありません。こうした問題を考えるためにも、兵士のアルコール中毒の状況は知っておくべき情報なのです。


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