北朝鮮のミサイル精度向上は本当?

2009.7.6



 昨日、聯合ニュースが、北朝鮮が4日に発射した7発のミサイル中、5発が発射台から450kmの地点の同じ場所に着弾したと報じました。

 「同じ地点」といわれても実際にどれだけの距離だったのが書かれていないのがおかしく感じられますが、英語版の記事を読むと、それが1〜2kmであったことが分かります。つまり、弾道ミサイルの命中精度を示す半数必中界(CEP)が最大2kmだということが言えるわけです。

 しかし、この数字はにわかには信じられません。2006年にテポドン2号を打ち上げた時、北朝鮮は短・中距離ミサイル6発を発射しました。これらはノドンミサイルとスカッドミサイルだったとみられていますが、その内訳は分析者によって違います。これらのミサイルのCEPは発表されていないものの、資料を見た政治家や外国の情報当局者などの言から推測すると10〜20kmと様々でした。仮にこれをずっとよく見積もって5kmだとしても、従来言われているノドンやスカッドのCEPよりも劣りました。ノドンとスカッドのCEP一覧表を見てください。

スカッドA 4,000m
スカッドB 900m
スカッドC 900m
スカッドD 3,000m
ノドンA 2,000m
ノドンB 1,300m


 一番精度の低いスカッドAのCEPで4kmなのです。かくも成績の悪かった北朝鮮の弾道ミサイルが急に精度が向上したとは考えにくいものがあります。その他のスカッドやノドンなら2kmというCEPは平均的なものだと言えます。つまり、今回の演習の成果は、兵器そのものの性能としては大きく「向上」したとは言えず、本来の力を発揮しただけだということになります。私は2006年の結果が悪すぎるのだと考えているので、今回の結果を見て脅威を感じるのは誤りだと考えます。もちろん、推測したCEPは生の観測結果ではなく、複数の発言から推測したものなので、その正確性は十分ではなく、今回の推定も完全ではないかも知れません。

 なお、CEPは資料により数字が大きく違うことにも注意してください。上にあげたCEPは一例であり、資料によって数字が違うのが当たり前なのです。


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