フセインが嘘をついたわけは?

2009.7.3



 military.comによれば、非政府系の研究期間「the National Security Archive」がFBIによるサダム・フセインの尋問記録を公表しました。記録の原文が、このサイトでpdfファイルで入手できます。(pdfファイルはこちら

 この中で、フセインは大量破壊兵器を持っていると主張し、核査察を拒み続けた理由はイランによる南部支配を恐れたためだと述べています。オリバー・ストーン監督の映画「ブッシュ」の中で、なぜフセインは持っていない化学兵器を持っていると言ったのかについて、閣僚たちが、国民に威厳を保つためだという意見を述べるシーンがあります。実際には、それですらなく、隣国イランがシーア派が多い南部に侵攻して居座るのを防ぐためだったというわけです。

 これは大量破壊兵器の歴史と合致しています。フセインは自国内でクルド族に対してやイラン軍に対してマスタードガスなどの化学兵器を用いました。過去に化学兵器が国同士の戦争で使われたことはありますが、侵略戦争で積極的に使われたことはなく、どちらかといえば、その出番は防衛戦において使われています。この点が日本ではよく理解されていません。北朝鮮がテポドン2号に化学兵器を搭載して日本やアメリカを攻撃する可能性はほとんど考えられません。化学兵器は効果が限定されており、特に弾道ミサイルで散布するのは技術的に困難なのです。化学兵器の効果は映画などで誇張されており、実際には防衛戦で限定的に用いる方が効果的です。侵略側にすれば、「ここぞ」という局面で化学兵器で被害を出すのが嫌なので侵攻を思い止まることになり、これが防衛側にとっては利点に見えるのです。

 北朝鮮の大量破壊兵器を考える上でも、この傾向は生きています。弾道ミサイルで化学兵器を日本に撃ち込むのは、費用の割には効果が期待できず、選択肢には入りません。また、日本との外交交渉が上手く行かないくらいで、化学兵器を用いることはありません。北朝鮮が弾道ミサイルを持っており、化学兵器も持っていることをリンクさせ、それを大規模に用いると考えるのは誤りです。特に、週刊誌などはこういう話題が大好きですが、まったく実状と合いません。私は、北朝鮮が大量破壊兵器を使うのは、北朝鮮の本土が侵攻された時だと考えています。北朝鮮は外国の侵略を極度に恐れる国であり、最後の切り札を持つことで安心したいのです。


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