国防総省がアフガンへの追加増派を決定か?

2009.7.22



 military.comによれば、米陸軍はイラクとアフガニスタンに派遣された兵士の負担を軽減するため、一時的に22,000人の階級を昇進させます。

 6月にアフガンに着任したスタンリー・マクリスタル大将は、ロバート・ゲーツ国防長官に60日間でアフガンに必要な戦略を提案するよう命じられていました。すでに、マクリスタル大将は経済的な懸念があっても、増員を提案するのを避けないと述べています(6月の段階では明言を避けていました)。これは前任のマッキアナン大将が、オバマ政権が承認した21,000人の増員の他に、2010年に10,000人を追加することを求めていたのを追認することを意味すると考えられます。また、度重なる派遣による兵士への負担を軽減するために、米陸軍はかねてより増員計画を実施中です。記事中で、ゲーツ長官がブッシュ政権期から継続中の547,000人から569,000人への増員に言及しているのは、これを意味します。米陸軍の欠員を埋める能力は危険な状態に達しており、この課題は今年で頂点に達し、次の3年間で和らぐと、長官は述べています。

 一時的に階級をあげるのことは、日本語では普通「戦地任官」といいます。戦地任官は必要な期間の間だけ階級をあげ、それが終わると元に戻します。兵士の責任は増えますが、昇進中は給料もあげてもらえます。こうして昇進した兵士の下に新兵を増員することで、兵数を増やすわけです。

 国防総省の中では、さらに10,000人をアフガンに増員することは決定済みかも知れません。昇進するのが22,000人なら、補充される部下はもっと多いはずで、増員分の21,000人を上回るはずです。さらに追加される10,000人を見込んで、31,000人を指揮する22,000人が昇進すると考えるのが常識的です。そうだとすれば、現在進行中の増員に関して、アフガンの兵力は十分との声が米軍指揮官から聞こえていましたが、実際には不足していると認識されていることになります。この辺の話になると、軍人も正直には言わないのが普通です。将校があまり増員をいうと、怠慢や無能と誤解される恐れがあります。戦況が思わしくない時、将校たちの口は動きがなくなり、当たり障りのことしかいわなくなるものです。逆に、勝っている時は口が軽くなり、話は具体的になります。現在、アフガンについて語る米軍将校の口調は堅く、そこからは状況が思わしくないことが連想されるのです。

 さらに、今回の昇進が戦地任官であり、3年後には兵士の負担が軽くなると国防長官が述べていることから、その辺がアフガン作戦の完了時期と、国防総省が見ていることが窺えます。アフガン軍・警察を養成し(それは非常に難しい仕事ですが)、アフガンの治安を一時的にでも向上させて撤退するという、イラクで使った方法をアフガンで実施する、その時期が3年後くらいとみて差し支えないのではないかと考えられます。これはオバマ政権の任期が切れる時期とも一致します。もちろん、こうしたことは予定が立つものではなく、状況により左右されます。たとえば、military.comによれば、オバマ政権は半年間で対テロ政策の打ち出すとしていましたが、その期限を延期することにしました。このように、様々な摩擦により、軍事行動は遅延するものなのです。しかし、米政府がその辺が落としどころと見ていると見当をつけるのに、これは十分な情報です。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.