東倉里発射施設は本当に完成しているのか?

2009.6.6
同日 18:30追加



 東倉洞発射施設の衛星写真をさらに詳しく検討します。

 以前にも紹介した写真ですが、2005年、2006年、2008年に撮影された東倉里発射施設の写真(写真はこちら)と、今回、発表された写真(写真はこちら)を比較してみます。

 talent-keyhole.comのページの中程に東倉洞発射施設の写真が掲載されています。用語の解説は以下のとおりです。

Future Vertical Processing Building 将来の垂直作業ビル(最終組立工場)
Movable Launch Pad 移動可能な発射台
Umbilical Tower 打ち上げタワー(アンビリカル塔)
Flame Bucket 火炎溝(ロケットの噴煙を逃がす施設)
Fuel Storehouse 燃料貯蔵施設


 報道では施設の80%が完成したとされています。これだけ完成していれば、無理すれば打ち上げができるように思われますが、そのようには思われません。報じられた内容には、肝心な部分の検討が欠落しています。

 肝心の最終組立工場は基礎部分らしいものが確認できるだけでした。打ち上げタワーから影が出ているのが確認されますが、最終組立工場には影がまったく見えず、建物が建っていないことは明らかです。この施設ではロケットを可動式の発射台の上に垂直に組み立てます。報道では、テポドン2号が組立工場内に搬入されたといわれていますが、この工場は写真には写っていない別の施設で、機体を水平の状態で組み立て・チェックする施設です。そこでの作業が完了したら、垂直の最終組立工場に運んで最終的な組み立てとチェックを行います。だから、これは当然、打ち上げタワーと同程度の高さの建物でなければなりません。しかし、少なくとも2006年の写真から、この施設があるべき場所で大きな変化は見られず、ほとんど手がつけられていないことが分かります。舞水端里にはないこの施設は、ロケットの打ち上げを潤滑に行うための目玉であり、それがまったく完成していないのに打ち上げを行おうとしているのが第1のポイントと言えます。

 ロケットへの供給ラインを持つ打ち上げタワー(アンビリカル塔)は2006年には組み立てられていますが、現在の写真の最上部にもクレーンがあるようには見えません。あるいは、公開された写真の解像度が低くて、そう見えるだけで、実際には取り付けられているのかも知れません。このクレーンはテポドン2号の部品を垂直に吊り上げて、発射台上で最終的な組み立てを行うための装置ですが、前述の組み立て施設があっても装備されていることがあります。日本の種子島宇宙センターでは、ロケットの先端に取り付けるペイロードは、打ち上げタワーに1段機体と2段機体を組み立てた状態で設置した後、クレーンで吊り上げて機体に組み付けます。しかし、組み立て施設が使えない以上、クレーンがないと発射台上にテポドン2号を据え付けることができません。つまり、打ち上げはできないということになります。いずれにしても、4月に舞水端里から打ち上げた際も、ペイロード部分は発射台に機体を据え付けた後で、覆いを被せて取り付けていますから、東倉里のアンビリカル塔にもクレーンは取り付けられることになります。それは舞水端里のよりは小型である可能性もあります。このクレーンの有無が第2のポイントです。

 globalsecurity.orgのティム・ブラウン上級研究員は産経新聞のインタビューに対して「基地は運用可能」と答えたと報じられますが、肝心な部分の情報が欠落しており、全体として矛盾を残す記事となっています。インタビューした記者は肝心なことを聞き忘れたと思われます。

 なお、2005年以降の写真を比較検討すると、工事の進捗が非常に遅いことが分かります。東倉里の施設は2000年からずっと建設中の状態が続いていました。資金や人的・物的資源、技術の不足を連想させることです。これから突貫工事で打ち上げができる状態にできるのかどうかには疑問もあります。北朝鮮がやると発表している以上、やるのでしょうが、相当に厳しい打ち上げになりそうです。

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