第2海兵遠征旅団がヘルマンド州に到着

2009.6.30
修正 同日 12:45



 spacewar.comによると、第2海兵遠征旅団10,700人がアフガニスタンのヘルマンド州に到着しました。ヘルマンド州はタリバンの拠点で大麻の栽培が盛んな土地です。

 7,000人はレザーネック基地(Camp Leatherneck)に、3,000人は州内のほかの場所に配置されました。オバマ大統領の新戦略下で総計17,000人の兵士と4,000人の軍教官がアフガンに配置されました。最初に5月中旬に戦闘航空旅団がカンダハル州に派遣され、ストライカー旅団戦闘団も配備されました。レザーネック基地はヘルマンド州中部の平地の砂漠に作られたテントと小屋の集合体です。第2海兵遠征旅団指揮官ラリー・ニコルソン准将(General Larry Nicholson)はAFPとのインタビューで、この増派は2007〜2008年の増派の成功を再現しようとするものではないと述べ、「増派(surge)という言葉はイラク向けであり、アフガンでは使わない、ここでは我々には終わりの日はない」と述べました。

 レザーネックとは海兵隊員の別名です。過去の基地名のリストを調べたわけではありませんが、珍しい命名だと思われます。よほど厳しい場所なので、海兵隊精神を忘れないように名づけたのかと想像します。ニコルソン准将が言うように、今回の増派はタリバンやアルカイダを打倒するものではありません。危険な状況にならないように弱体化させるための増派です。増派された部隊の当面の目標は8月20日に予定されるアフガンの大統領選挙を成功させることです。苦労が多く、成果の少ない任務になるでしょう。出来るだけ早くにアフガン軍を増強し、治安をアフガン人に任せて、米軍はタリバンとの戦いに集中したいと、米軍は考えているはずです。しかし、どれほど上手く行くのかは疑問です。オバマ大統領も状況が厳しいことを公言しています。

 一方、イラクでは都市部からの米軍撤退が実行に移されましたが、この時期を選んで、イラク戦争を象徴する人物の一人、リンディ・イングランド元上等兵のその後をmilitary.comが報じています。テロ容疑者を辱めている写真で世界に衝撃を与えた女性ですが、数百の履歴書を出しても就職できず、いまや生活保護に頼っています。あるレストランの経営者が彼女を雇うことを検討した時、ほかの従業員たちが店を辞めると言い出したため、就職できませんでした。彼女は食料品店にでかける時以外、ほとんど外出しません。変装や改名すら考えたといいます。

 彼女は愚かなブッシュ政策の犠牲者の一人だと、私は考えます。記事が書いているように、彼女は拷問を担当していたわけではありませんでした。拷問の効果をあげやすくするための準備をしていただけです。拷問は民間軍事会社の社員が行い、彼女たちはその下働きをさせられたのです。問題が発覚すると、軍人だけが軍法で裁かれ、世間の批判を浴びました。私は、軍人たちが軍法や国際法をよく勉強していれば、上官の命令を受けた時に疑問を持ったはずです。しかし、彼らが証言したところでは、テロ容疑者のための特別な規則があるのだと信じ込んでいたのです。上官の命令が間違っているはずはないと、彼らは思い込んでいたのです。このように、真面目にやっていたつもりが馬鹿を見る軍人は時々、歴史上に登場します。太平洋戦争でも、最前線で援軍が来ると信じて持久作戦を展開していた部隊へ、冷酷な玉砕命令が届いたのも、同種の話です。こうした問題への細やかな配慮なしに、戦争を始めようと考えるのは誤りなのです。本当に戦争をよく知り、その問題点を知る者でなければ、開戦など考えるべきではないということです。


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