韓国軍と在韓米軍が警戒態勢を引き上げ

2009.6.28



 明日の更新は中止します。その代わりに今日、記事を更新します。military.comによれば、韓国軍と米軍はその警戒態勢(Watch Condition、Watchcon)を「2」に引き上げました。

 韓国軍が警戒態勢を高くするのは、朝鮮戦争が休戦になった1953年以来5回目です。最も最近では、2006年10月の北朝鮮による核実験の時でした。警戒態勢「3」から「2」への変更には、偵察機、スパイ衛星の活用、通信の解析の増強を含みます。警戒態勢「2」は、軍が「重大な脅威」を懸念する時に設定されます。一方、北朝鮮は、「小規模な偶発的衝突すら核戦争に発展し得る。戦争の導火線に火がつけられる目前は時間の問題だ」と警告しています。韓国の報道機関が、韓国軍が北朝鮮との西方の海の境界線付近にある島に、海軍艦艇や砲兵部隊を移動したか、移動する計画があると報じていますが、韓国軍はその確認を拒否しました。

 危機に備えて部隊を移動すれば、それは警戒態勢ではなく防衛態勢(Defense Condition、Defcon)を引き上げたことになります。警戒態勢はそれとは別の防衛態勢の基準なので、まだ戦争からはかけ離れた状態にあります。同時に、これは戦争になった場合に備え、十分な情報を確保しておくための活動です。軍事行動は第一に情報収集が行われます。敵の種類や兵数、所在する位置は最も重要な情報です。居場所が分からない敵は攻撃できません。2003年にアメリカがイラクに侵攻し、サダム・フセインを探し始めた時、あるテレビタレントが「ゴルゴ13を送り込めば決着をつけられる」と言いました。実際には、ゴルゴ13みたいな人はおらず、単独でヒットマンを送り込んだところで、目標を探し出すことはできませんし、彼に目標の場所を教えることはできないのです。この作戦では、密告者の情報に基づいて空爆を行いましたが、フセインは被害を逃れました。目標を探知し、解析して確認し、部隊へ攻撃命令を出し、照準と攻撃の実行が完了するまでには時間がかかり、その間に目標は移動してしまうものなのです。砲兵の攻撃では、最初の砲撃で敵を釘付け状態にできれば、次々と同じ場所に砲弾を撃ち込むことで壊滅的な打撃を与えられます。しかし、軍隊の兵器はすべからく、こうした状態を作り出すまでが大変なのです。

 そこで、軍隊は情報収集のレベルを設定し、危機の段階に応じた情報を収集することになっています。戦時では、各部隊が攻撃すべき敵部隊の位置を把握する必要があります。敵の駐屯地や残存している部隊や施設は固定目標と考えればよいのですが、駐屯地を出て展開した部隊の位置は偵察活動により特定する必要があります。敵は部隊の地位を偽装によって秘匿しようとします。こうした駆け引きに幻惑されず、敵の情報をより多く、正確に集めた方が、分のよい戦いを行えます。Google Earthで朝鮮半島の38度線付近を見れば、韓国と北朝鮮の両国が大規模な防衛線を構築しているのが分かります。カッコ内に示したkmzファイルを開いて、その場所を見てください(kmzファイル)。38度線の韓国側最東端の施設が見えます。ここから西に続く山道を辿っていくと、韓国軍の38度線の防衛施設をバーチャル見学できます。時間がある方は北朝鮮軍の側も見学してみてください。もう一つのkmzファイルは先の施設の少し南側にある障害物を示しています(kmzファイル)。道路の両側に黒っぽい壁のようなものが見えますが、コンクリートの壁です。これは有事の際に爆破して壁を道路上に倒し、道路を塞いでしまう設備です。道路の西側は丘になっており、ここを超えるのにはスピードを犠牲にしなければなりません。海岸側もコンクリートで固められており、戦車が乗り越えられないようになっています。ここを通過しようとすれば必然的に大渋滞が起こり、この施設を先頭にして北朝鮮軍の車列ができてしまいます。韓国軍はその車列を砲爆撃する計画なのです。平時にはこうした施設の更新状況を確認するのが重要になります。有事にはここに展開される敵軍の状況が重要になるわけです。

 現在の警戒態勢「2」は有事の「1」と平時の「3」の中間です。ここに書いたことを参考に、どのような状況かを想像してみるとよいでしょう。警戒態勢が上がったからといって、浮き足立つべきではありません。マスコミの中には必ず扇動的な情報を流すところがあります。それらに惑わされるべきではありません。


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