今も続くイラク兵による米兵殺害

2009.5.9



 military.comが、イラク軍の兵士が米軍兵士を殺害する事件が後を絶たないと実態を報じています。

 昨年11月に起きた実例では、何ヶ月もアドバイザーとしてイラク軍第3陸軍師団第11旅団第2大隊と共に仕事をした下士官アンソニー・ディビス2等軍曹(Master Sgt. Anthony Davis)がその大隊の兵士が行った銃撃で死亡しました。海兵隊のウォーレン・フランク大尉(Capt. Warren Frank)も共に死亡しました。彼らは人道支援活動のために村(別の記事によるとニナーワ州のバイジ村(Biaj))の壁で囲まれた中庭にいたところをイラク兵ムハマンド・サレハ・ハマディ(Muhammad Saleh Hamadi)によって撃たれました。他に海兵隊員2名が負傷しました。発砲を終えると、ハマディは別のイラク兵が運転するハンヴィーで逃走しましたが、その日の夜に同族のメンバーによって引き渡されました。ディビス軍曹の上司ショーン・K・ケネリー大尉(Capt. Sean K. Keneally)は、「我々に安全を提供している部隊は、主要な脅威の一つです」と述べています。ハマディの裁判は彼が所属したチームを失望させるような遅いペースで進んでいます。彼の逃走を手助けした2名のイラク兵は有罪を宣告されました。ケネリー大尉は死刑宣告も献身的な過激主義者を止められないかも知れないと述べています。こうした事例は他にもあり、先だっての土曜日も、モスルの戦闘前哨で米兵2名がイラク兵に殺され、3名が負傷しました。

 米兵が友軍のはずのイラク兵に殺されたり、負傷させられるケースはこれまで何度も起きています。アメリカが日本や韓国を武装した時、こうした事件が問題になることはありませんでした。その経験から、イラクやアフガニスタンでも成立すると考えたのかも知れませんが、うまく行っていません。パキスタンでやっても同じことでしょう。特に、パキスタンでは、それまでは独裁者とみなされていたムシャラフ大統領(当時)をテロと戦う盟邦としてしまったのが裏目に出ています。短期的に自国に都合がよい外国を味方にする、功利主義的な外交をアメリカは放棄すべきでしょう。このやり方はブッシュ政権の時に最も使われた手法ですが、それがうまくいかないのは明白です。かつて、日本も大東亜共栄圏を作り上げるために、無理矢理、アジア諸国を味方に仕立て上げてみたものの、うまくは行きませんでした。国際関係は時間をかけて良質に積み上げていく必要があります。イスラエル建国以来の確執を解決できていない中東で、簡単に機能するとは考えるべきではないのです。


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