グルジアでクーデター事件が発生

2009.5.6



 グルジアでクーデター事件が起こりました。場所は首都トビリシ(Tbilisi)から19kmの位置にあるムコロバニ(Mukhrovani)にある戦車部隊の基地です。

 国内報道では500人の兵士がクーデターに参加したと報じていますが、ABCニュースは500人の内、何人がクーデターに関わったのかは不明としています。産経新聞は首謀者1人を逮捕、もう1人が手配中と報じていますが、ABCニュースは基地司令マミュカ・グロギシビリ(Mamuka Gorgishvili)が他7人の憲兵隊員と共に逮捕され、3人が逃走中で、民間人13人が拘留されたと、かなり内容が異なります。ロシアのインタファクス通信は、グロギシビリが、反政府支持者に対して武力を行使しないと、先に政府を批判する声明を発していたと伝えています。「自分は進行中の衝突において、国がバラバラに壊れる過程を穏やかに見ていることはできません。しかし、我々の戦車部隊は攻撃的な行動に訴えないでしょう」。サーカシビリ大統領は、クーデターにロシアが関与していると主張し、ロシアは大統領の発言を「正気ではない」と反論しています。

 グルジア陸軍の編成表を見ると、反乱を起こした部隊は第4歩兵旅団(4th Infantry Brigade)の一部であることが分かります。ABCニュースは戦車部隊の基地が現場だと報じており、そうだとすれば機甲大隊(Mixed Armor Battalion)が反乱部隊だったということになります。大隊規模の部隊なら500人という数字は特に不自然ではありません。この部隊は第4歩兵旅団の基幹部隊であり、主に首都を守る役目を担っています。しかし、直ぐに鎮圧されたことから、反乱部隊はごく一部で、500人という数字は基地にいる隊員全体を指すのではないかと想像されます。

グルジア陸軍の部隊編成表 図は右クリックで拡大できます。


 ロシアがこのクーデターを操っているのは疑いがありません。spacewar.comによれば、最近、ロシアはアブハジアと南オセチアの境界線を守るという内容の境界防衛条約を、これらの地域との間で締結しました。NATO、EU、アメリカは、この条約は昨年8月の停戦合意に違反すると批判しています。10年間有効のこの条約は、アブハジアと南オセチアの境界線を守る責任をロシアに課しています。グルジアに関しては、ロシアは天然資源の確保のために、一歩も譲らないという態度を続けており、NATOの軍事演習が始まる直前に行動を起こしたと考えられます。今のところ、ロシアはグルジアの多くの国民を反政府側につけることに失敗しています。しかし、ロシアの工作はこれで終わることはないでしょう。火種を撒いて、着火に成功さえすれば、現在、南オセチアとアブハジアに駐屯している部隊が戦闘を開始し、ロキ・トンネルを通って地上部隊が、黒海艦隊によって海兵隊が投入されることになります。海兵隊はすでに近い位置に配置されているようですし、地上部隊は秘かに動員態勢に入っているはずです。アメリカもこうした動きを把握しているはずですが、直ちに批判はしません。イラク、アフガニスタン、イラン、ソマリアなど、ロシアと協力しなければいけない問題がいくつもあるからです。ロシアはこの辺も計算して、グルジアの工作を進めています。次はどんな手で来るのかが気になります。


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