イラクでテロ攻撃による被害が急上昇

2009.5.4



 military.comによれば、イラクでの4月中の米軍の戦死者の数は18人へ上昇し、この7ヶ月で最悪となりました。先月以来の急増は、イラク人の死者も今年最高のレベル解押し上げた連続する爆弾攻撃によります。

 3月の米軍の戦死者は9人で、戦闘による死は4人。4月は戦死者が18人で、戦闘による死は13人でした。イラクの民間人の死者は371人、3月と2月が335人で同数、1月は242人でした。

 最も最近の暴力事件は、モスル(Mosul)にあるイラク最大のダム貯水池にあるレストランで起きた自爆攻撃です。攻撃の急増は、部族同士の殺し合いと、米軍が撤退することで、イラク人が自国の治安に責任を持つ準備ができているかを疑わせるための努力を強化しようとしているという懸念を増やしています。米軍広報官デビッド・パーキンス少将(Maj. Gen. David Perkins)は、テロのネットワークが影響力を特にバグダッドで再び手に入れたと述べて、最近の爆弾攻撃はイラクのアルカイダが行ったと主張しました。しかし、目立った攻撃は増加していますが、1年前や1年半前ほどではないと述べました。また、米軍はイラク軍が治安に責任を持つようになってから、態度が強引になってきた問題とも当面しています。先週、アルカイダの指導者アブ・オマル・アル・バグダッディ(Abu Omar al-Baghdadi)が逮捕されましたが、イラク軍が面会を認めないので、米軍はバグダッディが本人か確認できずにいます。また最近、ティクリートで米軍がイラク人男性2人を殺害した件で、痴呆知事と部族リーダーが米軍の襲撃が違法だったと主張し、緊張が高まりました。男性の葬儀では数百人が集まり、一部は空に向けて発砲し、「アメリカを倒せ!」と叫びました。ヌーリ・アル・マリキ首相(Prime Minister Nouri al-Maliki )も、米軍の行為を安全保障条約に違反した「犯罪」と呼びました。

 spacewar.comによれば、アルカイダの指導者でイラク・イスラム国家の「戦争大臣」と称するアブ・アヤブ・アル・マスリ(Abu Ayyub al-Masri)は、バグダッディが逮捕される前に40分間のビデオテープを公開し、イラクのムジャヘディンのを統合せよと主張しました。この記事には整備が進むイラク海軍やアフガニスタンの状況についても書いていますが、それらは省略します。

 最新のデータによると、4月の戦死者は現在は19人(戦死13人、非戦闘6人)に増えています。IEDによる死者が8人と最も多く、他は銃撃が1人、地雷が1人、戦闘中に死亡とだけ書かれているのが3人です。米軍の戦死者だけでなく、イラク人の死者も増えています。米軍は大都市から撤退しつつありますが、それでも戦死者が増えるのは武装勢力が攻勢に出ている証拠で、アルカイダがメッセージを発したことから、彼らが行っていると考えてよいと思われます。また、イラク国内のムジャヘディンに統合を呼びかけていることから、各地方の組織がバラバラに行動しており、武装勢力が必ずしもアルカイダとは関係がないことも読み取れます。ムジャヘディンは地方単位の自治組織みたいなもので、これらがアルカイダ一つに統合される可能性はほとんどありません。以前から指摘していますが、今後、イラクでのテロ活動がどのようになるかは、慎重に見ていく被必要があります。それはアメリカのテロ戦略に大きな影響を及ぼします。アフガニスタンとパキスタンの状況が悪化する中、イラクも同じ方向に進むと、いくらアメリカでも手が回らなくなるのです。反面教師として、日本人は「戦争においては、常に余裕を残すように配慮する」ことを学ぶべきです。米軍の人的・物的な資源を湯水のように使ったブッシュ政権のツケがいまオバマ政権に引き渡されていることを、見逃すべきではありません。戦争においては「しみったれ」「ドケチ」と呼ばれるくらいの方が、戦い上手だということです。


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