基地のゴミ焼却場問題でKBR社を提訴

2009.5.2



 military.comによれば、ハリバートン社の子会社KBR社が、イラクとアフガニスタンの米軍基地で有害物質を燃やしたことで軍人と契約業者に健康被害をもたらした件で訴えられました。

 類似した訴訟が、アラバマ州、カリフォルニア州、ジョージア州、イリノイ州、ミネソタ州、ミズーリ州、ニューヨーク州、ワイオミング州で今週提訴されました。

 ノースカロライナ州に7人の原告がおり、その内1人は死亡しています。エリザベス・ブーク弁護士(Elizabeth Burke)は原告が70人にのぼるという見込みを示し、集団訴訟にしたいと考えています。KBR社は米軍基地の近くに、トラック、タイヤ、バッテリー、死体、プラスチック、その他の廃棄物を投棄するためにトラクターを使うほど巨大な穴を作り、定期的に燃料をかけて燃やしました。有毒な煙、灰とガスが基地にいる人々に死の危険性もある健康被害をもたらしました。軍はこのゴミ焼却場を問題視しましたが、イラクのバラド空軍基地(Balad Air Force Base)のゴミ焼却場でガスに1年に満たない間、被爆した場合は健康被害はないと結論づけました。2008年7月12日に死亡した原告、フクェイ・ヴァリナ(Fuquay-Varina)は死ぬ前に、癌、激しい鬱血、鼻胴の障害と他の病気にかかっていました。バラド空軍基地に配属されたディヴィッド・ニュートン(David Newton)は、喘息、気道過敏、慢性の出血を伴う咳、頻繁な嘔吐に悩まされています。バニー・ライル・レイノルド・Jr(Benny Lyle Reynolds Jr.)は、ゴミ焼却場の煙に曝された後で、咳と呼吸困難、肺炎、継続的な咳、気管支の痙攣、息切れと鼻胴の障害で苦しむようになりました。バラド空軍基地でKBR社に雇われた運転手、アール・チャビス(Earl Chavis)は、呼吸困難、喘息、気道疾患、睡眠障害、偏頭痛、体重減少、関節痛で苦しんでいます。

 この問題は以前に紹介しました。それが法廷へと持ち込まれたのです。KBR社は米軍施設での感電死事故に関しても問題を起こしています。基地から出る膨大なゴミは請負業者であるKBR社が近くに穴を掘り、そこに捨てた上で火をつけて燃やしていました。このために出た煙、灰、ガスが基地にいる者たちの健康を脅かしたのです。愛国心を形にしたような民間軍事企業ですが、実際にやっている仕事はこんなものです。かつて、自衛隊員がイラクで武装警備員として働き、武装勢力に殺害された時、彼を「プロの中のプロ」と讃える声がネット上に散見され、苦笑したことがあります。そんな風に考えた人は、劇画などの読み過ぎだからです。戦争を考える時は、戦争が引き起こす様々な現象に目を向けなければいけません。

 最近、特攻隊の生き残りで、現在80歳だという方と偶然会い、お話を聞くことがありました。その方は、「当時はそういった時代だったのであり、戦争をしたことの善悪論を述べても仕方のないことです。あんなことは自分の代で終わりです。今は世界が協力して地球の上で生きていく時代です」と明確に見解を述べられたのに感銘を受けました。

 説明を要しませんが、KBR社の親会社ハリバートン社の元経営者はブッシュ政権の副大統領ディック・チェイニーです。公職に就くと民間の仕事は辞めることになりますが、この事実に疑問を感じない人はいないでしょう。自分で戦争をやって、自分が経営していた会社がその支援活動をやるのです。特に、軍による特需は狂乱的な企業活動が見られるのが普通です。普通の経済活動にはない利益が見込まれるのです。ここに「戦争成金」が生まれる素地ができあがります。いい加減な仕事をしても、政府は多額の報酬を払ってくれるのです。兵士の命に関わることだと思えば、金を惜しんではいられないので、財布の紐は自然と緩むのです。家庭が子供の教育費を惜しまないのと似たようなものです。こうして、最も責任の重たい活動のはずの軍事行動は、実はまったく無責任な活動へと変化していくのです。普通なら、あらゆる廃棄物を一カ所で焼却処分するようなことはしません。こうしたことを住宅地のごく近くで行えば、責任者は早暁逮捕されてしまいます。ところが、戦地ではそれが通ってしまうのです。遠征した軍は大抵、現地でこうした健康被害を伴う危険物質を投棄したり、作り出したりするものです。こうした問題に目を向けなければいけません。


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