パキスタン軍は順調にタリバンを掃討中?

2009.5.15



 spacewar.comによると、パキスタン陸軍のアシュファク・カヤニ参謀総長(chief General Ashfaq Kayani)が、タリバンとの戦いで、正確な攻撃を手段とすることで、たとえ危険を冒してでも、コラテラルダメージを最小限にするよう軍に命じました。

 戦いの規模に関する数字も掲載されていますが、11日に紹介した数字とほぼ同じです。犠牲者の数は更新されており、ロウワー・ディール(Lower Dir)、ブネール(Buner)、スワト(Swat)での武装勢力の死者は751人、パキスタン軍は29人、民間人の数字は不明で、いずれも独自に確認されていません。

 パキスタン兵1人が死ぬ間に、タリバン兵約26人が死んでいる計算です。しかし、これが本当なのかどうかが分かりません。おまけに民間人の被害も…そもそも数えているのかすら不明ですし…カヤニ参謀総長の指示もまったく信頼できません。米軍もどこまで状況をつかんでいるのでしょうか? 現場で情報をとりまとめているのは誰なのか? あるいはパキスタン軍の発表と無線傍受と無人偵察機による情報収集だけなのかも不明です。我々が聞かされているのは、それらから(計画的に?)漏れてくる間接的な情報だけです。イラク侵攻でもそうでしたが、成果があがっているかどうか分からない状況が何年も続きました。行政の政策に対する批判は直ぐに起こるアメリカでも、現在進行中の戦争に関しては黙って政府の言うことを聞く人が多いのです。日本においては、政府レベルからアメリカの言うことに従う傾向が強く、形は違いますが、やはり疑問は小さいレベルに留まります。そこで、報道された記事から現状を推測することになるわけですが、成果が出ていないことは、このウェブサイトで過去に何度も取り上げてきました。そして今、極めて重要な事態がパキスタンで進行しているのですが、それがほとんど分からないのです。こうした状況に関して、各方面から疑問の声があがらないのは本当に不思議なことです。


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