スワト峡谷の和平が崩壊

2009.4.25



 昨日から、アメリカの大手メディアはパキスタンでタリバンが勢力拡大に乗り出した件でもちきりですが、なぜかこの重大な情報が日本ではほとんど取り上げられていません。場所は先日和平が取り決められたスワト峡谷です。スワト峡谷とそれを含むマラカンド州が適用範囲でした。イギリスなどが懸念したとおり、和平協定は後退したのです。

 military.comによれば、パキスタンの首都から60マイル(約97km)にあるブネール(Buner)にタリバンが進出し、道路に検問を儲け、パトロールをはじめました。警察の6個小隊が現地に派遣されましたが、現段階ではこの部隊がタリバン対策のために派遣されたかどうかは不明です。小隊の人数も不明ですが、記事は一般的な小隊は30〜50人で構成されると書いています。パキスタン軍の広報官アザル・アッバス少将(Maj. Gen. Athar Abbas)は、タリバンが支配しているのはブナーの北部を中心にした25%に満たない地域だと述べています。武装勢力はサルタンワズ村(Sultanwas・kmzファイル)の、丘の近くに拠点を構えています。

 その後の報道で、タリバンはブネールから撤退したと報じられていますが、確認されていないとの情報もあります。一方、イラクでのテロ攻撃が増加する可能性をアメリカの専門家が指摘しています(記事はこちら)。ここ数日、自爆攻撃などが急激に増えたことを受けての発言です。こうした動きは西洋型の軍事理論と違っていて、評価が難しいのですが、常識的には米軍の戦力配置が転換される中、パキスタンとイラクの両方でテロ攻撃を行うことは正しい戦略なのです。しかし、これまでタリバンはこうした常識から外れた行動を行ってきました。そして事実上、成功しているわけで、今回の行動も何か成果があるのかも知れません。

 地図を見ると、事件が起きた地域とイスラマバードの間には大河があり、タリバンが河の北側から南側へ影響を及ぼすのは難しそうです。規模も小さいので、直ちにパキスタンという国が転覆するわけではありません。しかし、この地域の情報は少なすぎて、情勢を判断するのは困難です。現地の人たちの思考形態も知りたいところです。

 日本のマスコミが決定的に分かっていないのは、パキスタンがアルカイダとタリバンの手に落ちたら、この戦いにほとんど希望はなくなるということです。だから、扱いがこれほど小さいのでしょう。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.