テポドン2号:失敗の後始末

2009.4.23



 産経新聞によると、米誌ニューズウィーク・ロシア語版4月13日号(電子版)は22日までに、北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げに成功したと発表した翌日の6日、首都平壌で検討会を開き、宇宙開発計画の責任者を強く叱責していたと報じました。

 情報源が不明なので確実性に乏しい記事とは思いますが、3段機体が故障していたことが事実なら、責任者が叱責されるのは不自然なことではありません。しかし、3段機体の故障は打ち上げ前に分かったはずで、機内のコンピュータが検出して、打ち上げをストップしてもおかしくない話です。4日に気象条件がそれほど悪くないのに打ち上げなかったのは、機材トラブルの可能性を連想させます。普通なら、ロケット打ち上げは中止されるべきでしたが、打ち上げると宣伝した以上、やらざるを得なかったのでしょう。何にせよ、そう多くはないはずのロケット専門家を処罰することはできず、叱責が関の山だろうと想像します。

 太平洋に派遣した軌道観測船が故障で引き返すなど、彼らの責任の及ばないところでの失敗もありました。さらに、人工衛星を持つ国は人工衛星が正しく飛行しているかどうかを調査し、その軌道を修正するために、世界各地に観測所を置いています。日本も国内だけでなく、スウェーデンやオーストラリアなど、海外数カ所に観測所を設けています。北朝鮮が人工衛星開発を行う上で、こうした海外の観測所は不可欠になってきます。今のところ、そうした海外の施設の存在は聞いたことがありません。現段階では、人工衛星を軌道に乗せられるかどうかが北朝鮮の技術開発テーマであり、そうした施設が必要な段階にはないのかも知れません。

 それから、少し古い記事ですが、中央日報が8日に報じたところでは、韓国政府筋の情報としてテポドン2号の最大到達高度は485kmでした。北朝鮮が発表している光明星2号の最低高度は490kmで、それに僅かに足りないところまで飛んだことになります。しかし、3段機体が点火しなかったことを考えると、これは悪くない数字と見ることもできます。しかし、1段機体の平均速度は1.19km/secで、テポドン2号の2.66km/secを大きく下回ったと記事は書いています。平均速度よりも最大速度を知りたいところですが、打ち上げの映像を見る限り、1段機体の加速力はそれほどでもありません。その後も、そこそこの加速しかできなかったようです。


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