テポドン騒動のまとめ その3

2009.4.13



 チャールズ・ビック氏からテポドン2号の飛行について最新の解析結果をもらっていますが、公表してよいかどうかが分からないので、許可がもらえるまでは掲載しません。おそらく、近くglobalsecurity.orgに掲載されるはずなので、それを確認したら解説します。

 しかし、一つ言えるのは、それは現在日本で報じられている内容とはかなり異なっているということです。このことは、日本とアメリカの間に、弾道ミサイルの軌道解析の技術に大きな隔たりがあることを示している可能性があります。2006年のテポドン2号打ち上げの時から、私はこのことを考えるようになっていましたが、2度目の打ち上げを経験し、よりその考えを深めるに至りました。

 それから、デジタルグローブ社のテポドン2号の写真についても、ビック氏の見解がもらえました。この写真では、まだ1段機体は切り離されていないということです。明確な理由も教えてもらえましたが、とりあえず結論だけご紹介しておきます。一部の評論家が主張した1段機体の切り離しを捉えた写真だという説明は、先に私が指摘したとおりに誤りでした。

 北朝鮮が舞水端里発射施設の管制センターの映像を公開しましたが、国内メディアから中央部に広いスペースがとられており、職員がコミュニケーションをとりにくい点で妙だという指摘が出ています。私も同じ理由でおかしな管制室だと思いました。おそらく、本物の管制室を見せたくないので、別にセットを作って撮影したものではないかと想像します。

 氏名は忘れましたが、海外の専門家がテポドン開発者たちは懲罰を受けるだろうと指摘しています。私はこれは誤りだと考えます。金正日が打ち上げを視察し、記念写真まで撮影したのに、職員を処罰したのでは、内政に混乱を来します。また、専門家を簡単に外せるような余裕は北朝鮮にはないでしょう。一つの仮説ですが、今回の打ち上げは人工衛星を軌道に投入できなくても成功とみなすことで、政権内では合意があったのかも知れません。もともと、そこまでやり遂げる自信はないものの、とりあえず打ち上げを行うことに意味があると考えたのかも知れません。そうすることで、海外との交渉をやりやすくして、運がよければ技術的な進歩も実現します。

 国連の決議は議長声明という形に落着します。最初から、国連では追求しきれないことは分かっていました。もともと、日本やアメリカの主張には無理がありました。「人工衛星が確認されないから弾道ミサイルだ」とするなら、日本のH-2Aロケットでも人工衛星の軌道投入に失敗した場合、弾道ミサイルだと決めつけられることになります。日本は北朝鮮の脅威だけを理由にして国連で主張を展開したわけですが、宇宙開発に関する歴史を無視しても結果は出ません。なにより気になるのは、日本を攻撃するのに適したノドンミサイルが存在するのに、それについては何の対処もせず、脅威にはならないテポドン2号にだけ反応しているところです。これについて、誰も疑問を示さないところも変です。何度もいいますが、日本は近すぎてテポドン2号では攻撃できません。それで大騒ぎをしても意味のないことです。


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