テポドン2号報道が沈静化?

2009.3.5



 space-war.comが、北朝鮮のテポドン2号発射準備に関するアメリカの対応について報じています。これを読むと、これまで報じられていたことが変化してきたように感じられました。

 米太平洋艦隊指揮官ティモシー・キーティング海軍大将(Admiral Timothy Keating)は、迎撃ミサイルは瞬時の警告で準備されると述べ、「それが人工衛星の発射以外の何かであるように見えたら、我々には大統領の指示に対応する完全な準備を整えるでしょう。我々が狙ったものに命中させる見込みは非常に高いのです。それは我々の同盟に大きな安心と信頼と安心の源となるでしょう。」と述べました。

 これまでは、アメリカは何であれ北朝鮮がテポドン2号を発射したら、撃墜すると主張していたと記憶します。今回の発言で、人工衛星ロケットであった場合は手を出さないことを示唆したように見えます。これは興味深いことです。なぜなら、弾道ミサイルと人工衛星ロケットの発射を見分けることはほとんど不可能だからです。人工衛星ロケットは高度100km程度で人工衛星を保護しているカバー(フェアリング)を分離します。弾道ミサイルなら、その後、軌道上を飛行した後で、高度を落として再突入を行います。これ以外では大きな違いはないので、どの段階で違いを見分けるのかという問題があります。現実的には、再突入が確認された時点で迎撃命令が出ることになるはずで、おそらく、再突入はないと予測されているので、アメリカとしては安心して迎撃を主張できるのではないかと考えられます。

 国防総省のチャールズ・マッキュアリ(Charles McQueary)は、北朝鮮のミサイル発射に関して3通りのシナリオをテストし、すべて脅威を打破したと主張します。マッキュアリは、この結果が、システムが機能するデモンストレーションだと述べています。

 どんなシナリオをテストしたのかは不明ですが、テストはテストであり、迎撃できるかどうかはやってみなければ分かりません。また、アメリカがいう迎撃は、再突入を果たした弾頭を撃破することであり、日本のように上空を通過するのを攻撃するのとは異なります。アメリカがテポドン2号が人工衛星ロケットであることを知っている場合、再突入はないと踏んで迎撃を叫ぶのは、むしろ政治的な対応です。

 元CIAの北朝鮮専門家で、現在はヘリテージ財団に所属するブルース・クリングナー(Bruce Klingner)は、テポドン2号の打ち上げは70〜80%の可能性があると主張しています。この数字の根拠は分かりませんが、弾道ミサイルの発射成功率としては良好な数字をあげています。

 浜田防衛大臣の迎撃発言も記事に書かれていますが、記事は「しかし、技術的にも政治的にも、日本がアメリカに向かって自国の領域を通過するミサイルを撃墜できるどうかは、未確認です。」と書き、政治的な理由については「集団自衛権」をあげています。技術的な理由については、なぜか書いてありません。これは本当のことを書くと、日本に恥をかかせるので自粛したのかも知れません。

 韓国からは差し迫った情報ばかりが出ていましたが、この記事には冷静な見解が書かれています。玄仁沢(ヒョン・インテク)統一相は、「私はミサイル発射が差し迫っているとは信じませんが、準備は進んでいます。」と述べました。一番早期に見積もった予測では、すでにテポドン2号は発射されていたことになりますが、現実的な見積もりでは4月頃です。特に、強風を避けるためには、4月以降の方が望ましいように思われます。

 初期の報道は、発射準備がもたらした衝撃により、内容が不正確になったのかも知れません。少しショックが落ち着いてくると、まともな情報が出てくるようです。


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