テポドン2号の射程は前回と同じ

2009.3.27



 毎日新聞によると、発射台に設置されたテポドン2号は高さが33〜35mの3段式ロケットの形状とのことです。

 globalsecurity.orgのチャールズ・ビック氏による推定では、2006年に打ち上げられたテポドン2号の全長は35.8mでした。偵察衛星による解析の誤差を考えても、今回のテポドン2号の全長も約35mと考えてよさそうです。なお、23〜24日の衛星写真がglobalsecurity.orgに掲載されたので、チェックしておいてください。。

 ここで気になるのは、テポドン2号は2006年のタイプと何ら大きさの変更はないということです。それなら、最終組立工場を増築する必要もなかったことになります。もともと、建物の全長を80mにまで増やした工事は規模が大きすぎる点には違和感を感じていました。単なる攪乱のために増築したなど、北朝鮮の意図は不明ですが、とにかく、今回打ち上げられるテポドン2号は前の失敗点を改良したものと考えてよさそうです。つまり、射程が8,000kmを超えるという推定は誤りで、6,700km程度、2006年のテポドン2号と同等と見るべきです。やはり、不調だったジンバル装置を改良したのが、今回のテポドン2号だということでしょう。これまで、私は今回のテポドン2号が全長を延ばした点が疑問だと書いていきました。やはり、実物が姿を現すまでは、全長が変わっていない可能性も捨てるべきではないと反省しました。

 ロケットの打ち上げには天候が大きく関係します。特に、風向き、気温、雷などは、打ち上げ延期や中止につながる要素です。そこで、舞水端里の天候が知りたくなるわけですが、直接的なデータは見つけられないので、発射施設の補給源にもなっており、舞水端里の南西約40kmに位置するキムチク(Kimch'aek・kmzファイルはこちら)の天気を参考にしてみます。weather-underground.comのデータを見ると、今後1週間、雪と雨が交互に降るようです。4〜5日の天気予報はまだ不明ですが、気温は氷点下にはならないと予測できます。嵐になるようなこともなさそうです。月は3月2日に半月になり、9日に満月になることから、夜間の作業はやりやすそうです。以上は必ずしもロケットの打ち上げに向いた条件ではありませんが、不可能な条件ではありません。

 政治面では、ここに来て日本に逆風が吹いています。まず、韓国が「国連安全保障理事会による制裁については積極的に推進しない姿勢」を示しました。クリントン国務長官が「米国が北朝鮮のロケットを撃ち落とす計画はないと表明」しました。ただし、国連安全保障理事会に問題を提起する点ではぶれていません。ここから、拘束力のない議長決議だけに終わる公算が高まりました。以前から、テポドン2号を迎撃するという対応には疑問があり、国際法上もロケット発射自体を強く批判することはできないと指摘してきました。やはり、事態はその方向で進展しています。つまり、テポドン2号に対する迎撃は行われず、国連決議も拘束力のない形に落着するということです。「人工衛星の打ち上げを名目にした弾道ミサイルの発射」という筋書きを作り上げたNHKをはじめとする国内メディアは、今ごろ困っているのではないかと想像します。また、日本政府も、アメリカが飛んだら一緒に飛ぶという発想を捨てる、よい教訓となったと言えます。迎撃態勢を整えて、地方自治体に対する説明会まで開いてしまった以上、もはや日本政府は後には退けません。何もないとは知りながら、警戒態勢を続けるだけです。秋田県と岩手県だけでなく、首都圏にもPAC-3を配備するという決定を誰が提案したのか、私は知りたいと思います。これは慎重と言うよりは臆病者の判断です。

 昨日、麻生総理はぶら下がり取材で「安保理決議違反というのは大きい。えらくナメタことを言っているけど。安保理の話に従ってもらうというのが、通常の国の対応ですから。あなたえらい、軽いものようにいってますけど、全然違う思いますよ」と述べました。麻生総理は状況が見えていません。政府内の誰も、こういう状況を是正しようとしないのが、現在の日本の現状なのです。メディアは指摘しませんが、これこそが日本政治の最大の問題点だと、私は確信しています。


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