ホルムズ海峡で米艦艇が衝突

2009.3.21



 ホルムズ海峡内で、アメリカの攻撃型潜水艦「ハートフォード(Hartford)」と揚陸艦「ニューオーリンズ(New Orleans)」が衝突した事件について、navy-times.comが報じています。

 衝突は現地時間の午前1時に、イランとオマーン間の狭い通過帯域で発生し、ハートフォード側に15人の負傷者が出ました。事件の詳細は明らかにされていません。

 衝突時、ハートフォードは「水深の浅い水中にいた」と海軍当局者は述べています。両艦は自力で港へ向かっていますが、港の名称は明らかにされていません。ハートフォードは浮上しており、港に着くまで浮上したままの予定です。ニューオーリンズの2つのバラストタンクと燃料タンクが破壊され、燃料タンクからは25,000ガロン(約94.6キロリットル)のディーゼル燃料が漏れました。また、3つの区画が浸水しました。ハートフォードは司令塔とバウ・プレーン(船首安定舵)に、目に見える損傷を被りましたが、原子力エンジンは無事でした。ホルムズ海峡とペルシャ湾でアメリカの潜水艦が関係した衝突事故は、これで3回目です。記事には、これまでの事故の概略も紹介されています。

 ニューオーリンズが損傷したのは、おそらくバウ・プレーンが船体を切り裂いたためで、衝突がかなり激しかったことを連想させます。バラストタンクと燃料タンクの両方が破壊され、人員がいる区画にも浸水したという事実が、損傷の大きさを連想させます。ハートフォードも潜水できなくなったということは、かなりの損傷を被ったものと考えられます。ニューオーリンズの満載排水量は24,433トン、ハートフォードは6,927トン。船体の重量は分かりませんが、排水量から、その差を想像することはできます。衝突事故では重量が軽い方がより大きな損害を受けます。負傷者がハートフォード側に集中したのは、そのためです。国内報道が報じたよりも、事故の規模は大きいと見るべきです。

 「イランとオマーン間の通過帯域」という説明から、下の地図の一番東側の通過帯域で起きたのだと推定できます。ホルムズ海峡は狭く、対岸にある国の領海を規定通り最大12海里(約22km)に設定することができません。こういう場合、中央部分に狭い通行帯を設定し、通過する船舶はそこを通ってもらいます。上の地図で「shipping lane」と書かれている紫色の部分がそれです。こうした海域では、しばしば衝突事故その他の問題が起こります。よく潜水艦は自分の位置を隠すために、他の船にくっついて航行するといわれます。また、水上艦が起こす水流が潜水艦を船に引きつけることがあるとも言われます。今回の事件も、こうしたことから起きたのかも知れません。

地図は右クリックで拡大できます。

 こうした環境において、イランは米戦闘艦にしばしば挑発行為を繰り返しています。1988年7月3日、米海軍のミサイル巡洋艦ヴィンセンスが約290人の民間人を乗せたイラン航空655便を撃墜した事件では、イランの挑発行為が発端となって起きたことが、後日明らかになっています。ヴィンセンスは挑発したイラン船を追跡している間にイラン領海に進入し、国際航空路の下にいました。そこへ655便が接近したのですが、ヴィンセンス乗員は自分たちが国際便航路の真下にいることを認識していませんでした。かつ、655便は離陸した空港にいた別のイラン戦闘機と誤認された上、上昇中の655便が降下をはじめ、攻撃態勢に入ったと錯覚した隊員の報告により、ミサイル発射が決断されたのです。こうした事実は当時は明らかにされず、真相はかなり後になって判明しました。このように、事故の真相はかなり後になってから判明することがあります。軍隊がらみの事故は、単純に考えずに、事故のデータを記憶しておき、後から出てくる情報を見ながら慎重に判断していく必要があります。


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